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葬儀の現場から

第115話「大切な人」

ご主人を亡くされた奥様が喪主をつとめられた葬儀。
喪主様に通夜の流れの確認と説明をしようと近くまで行き声をお掛けしようとしたその瞬間―。
「この写真かっこいいでしょ?」
そう言って指を差したのはご主人のご遺影でした。

「周りの親戚がなんと言おうと私はこのサングラスをかけた写真が好きなの」と話して下さいました。
ご遺影と言うよりはブロマイドのようなお写真でした。

そして葬儀当日、そこには喪服姿の喪主様がおられました。
「私は着物が好きじゃないの、だけど主人が好きだったのよ」
最近では家族葬となりますと略礼服の方が多いのですが、ご主人のためにわざわざ着物を着てらしたのです。

全ては大切なご主人のため…。
声を掛けても出てくる言葉はご主人のことばかり。
寝る間を惜しんででもご主人の最後のお姿を目に焼き付けておきたいと一睡もされていないご様子。

ご主人の好きだった着物の着用。
もっともっとたくさんの時間をご主人と過ごされたかったことでしょう。
本当に全力で対応されていらっしゃいました。

「大切な人」との別れの場のひとつがご葬儀です。
いつもそばにいて当然と思っていた人が急にいなくなってしまう。それは何十年後なのか数年後、もしかすると明日なのかもしません。
そう考えると常に「今」という時間を「大切」にしなければならないことはいうまでもありません。
ただ、「大切な人」との別れの瞬間までには、それぞれのご遺族にたくさんのストーリーがございます。
私たち葬儀社のスタッフが、ご遺族の「大切な人」に向けられる思いや過ごされてきた時間に何か感情を入れるなんてことは勘違いにもほどがあると思います。
私たちにできる事は、目の前のご遺族が求めておられることを、いま出来る力で精一杯お世話させていただくことです。
私たちにとっては、故人様そしてご遺族、参列されるすべての方が「大切な方々」だからです。

喪主様が全力でご親戚に対応されていらっしゃるのですから全力でそのサポートをする。
喪主様の手の届かないところがあれば喪主様に成り代わってご親戚に対応する。
そんな当たり前のことかもしれませんが、今回のご葬儀で喪主様のご主人に対する思いとご親戚に向けられた対応の素晴らしさを同じ空間で接し、葬儀社のスタッフとして「全力」ということを今一度教えていただいたご葬儀でした。

後日お伺いしましたら、ご遺影がそのまま喪主様の携帯電話の待ち受け画面になっており、
私にはそのご遺影のご主人が奥様に「本当にありがとう」と、おっしゃっているように見えました。

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