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葬儀の現場から

第117話「私に出来ることとは」

先日、担当させていただいたご葬儀の時の話です。

故人様は50代のご主人。

自宅が大好きだったご主人のために奥様の強いご希望で、ご逝去後病院からご自宅へと帰ってこられました。
そしてご自宅でお別れを行い、お花や思い出の品と共にご遺族やご親族に見守られながら火葬場へと向かわれました。

ただ奥様は、ご出棺後から大変無口になられ、何かをお考えになられていらっしゃるご様子でしたので、「ご満足いただけなかったのか」と不安に駆られました。
その日は大変お疲れのご様子もあり、お話を伺うことは叶いませんでした。

葬儀後、数日たった或る日、再びご自宅に伺い奥様にお会いする機会がございました。
その時お会いした奥様は、ご葬儀の時に物静かになられたときと変わらないご様子でした。
私は、何かしら不手際があったか、または不愉快な思いをさせてしまったのではと思い、
お話をお聞かせ願えないかと奥様にお伺い致しました。

すると、はっとした表情で奥様が、ご主人は医療事故が原因で実に30年近く寝たきりとなり、その間ずっと介護をしてきたこと、本当に夫婦ともに大変だったことなどをお話しくださいました。

そして奥様は、
「大変だったけど主人の介護をすることが、家事をするのと同じように生活の一部になっていたの。そんな当たり前に流れていた時間が無くなってしまった事、本当に主人がいなくなってしまったんだなって思うのが辛いの」とおっしゃられました。
また、「部屋の整理はついてきたけど、この部屋から主人のものが全て無くなってしまうと、私が30年間やってきたことも無くなってしまいそうで・・・。だから、このベッドだけは残しているの」と涙を流されたのです。

そしてしばらくすると、
「つまらない話を延々と聞いてもらってありがとう。周りに聞いてもらう人もいないし話せてほんとにすっきりしたわ。ごめんなさいね、ちゃんと良いお葬式ができたと本当に思っているのよ」と、すこし笑顔を見せてくださいました。
そのお言葉をいただいて、自分の未熟さを痛感いたしました。
できる限りお客様のご希望に沿えるように、そして少しでもご負担を軽減できるようにお手伝いするのが、私の仕事のはず。
しかし、満足していただけたかどうか?というところばかりをお客様に押し付けてしまい、結局は気を使わせてしまうようなことに。

私が、ご遺族と同じ気持ちになる、ましてや今回のように奥様からいろいろな話を聞かせてもらったことで、そのお気持ちを察して…なんて到底できないことです。

そんな中で本当に私どもにお願いして良かったと思っていただけるには、ご遺族の一員のように動き、頼れる存在であること。そして抱かれたお悲しみを少しでも和らげ、決して後悔しないお見送りのお手伝いができるよう、黒子としてそっと寄り添うことが大事だと感じさせていただいたご葬儀でした。

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