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葬儀の現場から

第96話「ご自宅へ帰る」

よく言われる話ですが、昔は臨終を迎えられようとするとき、親族が集まり布団の周りを囲み、かかりつけの医師が「○時○分、ご臨終です・・・」と皆で看取るということが当たり前のような光景であった頃がございました。

現在では、その場所が病院に変わっていることが少なくありません。

そうなりますと、当然ご遺族は故人様を弔うためご安置先を決めなければなりません。

当然、「ご自宅へ連れて帰ってあげたい・・・」とお考えの方が多いのですが、それが叶わない場合もございます。

それは住宅事情や近隣への配慮、そして密葬で葬儀を行いたいという故人様の生前中の希望など理由は様々です。
でも、できるならご自宅へ・・・この思いを出来る限り可能にしてさしあげられるかどうかも私共の経験に依るところでございます。

つい先日の話ですが、病院でお亡くなりになられた故人様をこのあとどうしたらよいのか全くわからず、いろいろな葬儀社へと連絡をされたご遺族がいらっしゃいました。
どの葬儀社に連絡してみても何故かしっくりこない。本当に困っていらっしゃる様子が電話越しでも伝わってきます。

そして、何社目かに私共にお電話をされたとのこと。

では何を一番心配されていらっしゃるのか?

「連れて行く安置先の料金が高いと・・・・、でも一緒にいたいんです・・・」

とおっしゃるので、故人様をご安置する先を「ご自宅に連れて帰られることは出来ますか?」と私の方からお話しましたら「えっ、おうちに連れて帰ってもいいんですか?」とのお言葉。

様々な理由や事情があるにせよ、このご遺族は一度、故人様を家に連れて帰ってあげたいというお気持ちが強かったわけです。
お家の状況や、間口、間取り等お聞きしましたが、ご安置が難しいようなお宅ではありません。
むしろ私の経験上では、「連れて帰ってあげられやすい」お家だと思うほどです。

なぜ、何社も電話をされてそのうちの1社も「ご自宅にご安置しましょう」という話にならなかったのか?
大変不思議でなりません。

極力、ご葬儀の費用は抑えたい。それは大抵のご遺族がお考えになることです。

そうなれば、できることを考えなければなりません。

故人様がお亡くなりになられたのは事実です。ご遺族の身になれば、とにかく病院からご安置場所を決め、そして少しでも傍で供養をしてあげたい・・・と思うのが当たり前です。

今回のご遺族は、ご自宅にご安置ができ、「本当に久しぶりに自宅で一緒に一晩をすごせました」と、喜んでいらっしゃいました。

葬儀社の事情で、故人様の安置先が決まるのではありません。
葬儀社主導であったならば、先のご遺族の喜びを奪ってしまっていた可能性だってあるということです。

我々は、少しでもご遺族、そして故人様の希望に沿えるように安置先を提案させていただかなければなりません。

そうすることで、大きな悲しみの中であっても、故人様とご遺族が安らげるひと時を提供させていただけると私は考えています。

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