葬儀

一日の重み・・・ご葬儀で知る一日の大切さ

湯灌が終わり、髪の毛を整え、お化粧をしたお嬢様のお顔を見たお母様は

「きれいね、本当にきれい・・・」

と、優しく髪をなでながら、しばらくお嬢様のお顔を見つめておられました。

 

三人兄弟の長女として生まれ、ピアノや習字教室に通い、弟さんや妹さんの面倒をよくみてお母さんを助けてくれる、頼れるお嬢様・・・。

 

そのお嬢様が病気になったのは10歳の時、はじめは体調がわるいのかな、くらいに

思っていたそうですが、食事の際に何度も箸を落としたり、得意のピアノを弾いても

指が動かなかいなど、症状が徐々にではじめたころ、お嬢様が痙攣をおこして

救急搬送されたと学校から連絡があったそうです。

 

お母様が病院に駆けつけた時はすでに痙攣はおさまり、お嬢様はお母様を見て安心

したのかにっこり笑ったそうですが、お母様はその時一抹の不安が胸をよぎったと

いいます。

 

いくつもの病院で検査入院を繰り返す度、不安はどんどん膨らんでいったそうです。

ご病気が子供の頃にかかった病気の後遺症であることがわかった時、

お嬢様の症状は一人では歩けないほどに進行していたそうです。

 

すぐに専門の病院に転院しましたが、お嬢様が寝たきりになるまでそんなに時間は

かからず、闘病生活ははじまりました。

 

病気を発症した頃「なぜ、この子が・・・」と、やりきれない思いと先の見えない不安で

いっぱいだったそうです。

 

なれない事ばかりで、毎日必死だった・・・。お姉さんにつきっきりになってしまい、

弟さん、妹さんにもずいぶん寂しい思いをさせてしまったとおっしゃいました。

それでも、弟さんと妹さんはお姉さんが大好きで、いつも一緒だったといいます。

 

弟さんと妹さんが就職して独立したのを機に、お母様とお嬢様は病院のすぐそばの

マンションに引っ越し、母娘二人の生活を始めたそうです。

 

 

「言葉にでは言い表せないことはたくさんあったけど、いつの間にか娘といる生活が

日常になっていた」

 

「同じ病気の子を持つ親のなかには、どうしても子供を施設にあずけないといけない方

もいたけど、私は自宅でずっと一緒に過ごすことができて恵まれていたと思う」

 

「大変なことはたくさんあったけど、辛いと思った事は一度もないのよ、辛いことは

忘れたのかもしれない・・・ここで娘と過ごした日は本当に楽しかった」

 

と、打ち合わせの際、お嬢様との思い出を私に話してくださいました。

 

また「この日が来ることはわかっていた、私が先にいく訳にはいかないでしょ?」

ともおっしゃいました。

 

「娘にお化粧してあげるなんて考えたことがなかったけど、こうやってお化粧した顔を

見ていると、大人になったんだなぁて・・・大きくなってくれてありがとう」

 

「きれいね、本当にきれい・・・」

 

と、お嬢様を見つめるお母様の姿を拝見して、

このお二人は1日1日をとても大切に二人三脚で生きてこられたのだと思いました。

 

ご病気がわかってから今日までの、この母娘お二人の1日という時間の重みを知り、

お手伝いさせていただく通夜、葬儀。このお時間も、お二人は勿論、ご遺族の皆様に

とってかけがえのないものにしていただかなければならないと、いつにも増してクッと

力がこもった感覚を忘れません。