葬儀

葬儀スタッフの責務

先日お世話をさせていただいたご葬儀の喪主様は、長い間お父様をご自宅で介護され、

ご自宅で最期を看取られたそうです。

ご逝去の連絡を受け、私がご自宅に伺った時、喪主様と妹様がいらっしゃいました。

お父様の手を握りしめて泣いている妹様と対照的に喪主様は、

「私はもう十分世話もしたし、思い残すこともないから・・・」と、

ご親戚の電話対応に追われながら、テキパキと部屋を片付けておられました。

 

翌日、ご自宅を出発される前に、ご親族の方にお手添えいただき、お父様の身支度を整え棺に納めさせていただきました。

「棺に納めて差し上げるものはございませんか?」

とお尋ねすると、食べる事が大好きだったという 故人様の為に

「たくさん食べてね」 「好きだったお饅頭」 「煎餅が食べたいって言ってたなぁ」

と、皆様でたくさんのお菓子を手向けらました。

喪主様も「ごめんね、お父さん・・・」とチョコレートを納められていました。

 

準備が整いご自宅を出発すると、寝台車の中で急に喪主様が泣き出されました。

「お姉ちゃん、大丈夫?」と妹様が聞くと

 

「お父さんを棺に納める時、みんなで痩せて別人みたいだの、たくさん食べろだの、まるで私が何も食べさせなかったから、痩せてしまったと言われたみたいで悲しかった」

 

「みんな、そんなつもりで言ってないし、そんな事思ってないよ」と妹様が仰いましたが、

「私だって、本当はたくさん食べさせてあげたかった。医者にのどに詰めないように流動食にするといわれ流動食にしたけど、お父さん90過ぎだし、好きなものを食べさせてあげてもいいんじゃないかって、ずっと思ってた・・・」

「本当は、生きている時に好きなものを好きなだけ食べさせてあげたかったのに・・・」

この言葉を聞き、私は喪主様が棺にお菓子をお手向けになるときに、

「お父さん、ごめんね・・・」と、おっしゃったことを思い出しました。

十分世話をした。思い残す事はないと仰っていましたが、本当は何も食べさせてあげる事ができないまま、お父様を見送ってしまったことを、すごく後悔されているのだと・・・。

式場に到着すると、妹様が棺に納めようと持って来られていた写真を祭壇に飾られました。

闘病が長く、なかなか思うように外出もできなかったお父様ですが、温泉が好きだったお父様の為に喪主様が計画した温泉旅行のお写真でした。

車椅子に乗り、満面の笑みのお父様とお父様に寄り添う喪主様・・・。

苦しいだけの闘病生活ではなかった、楽しいことたくさんあった、何より、お姉ちゃんは

一生懸命介護をしたことを親戚の皆様にわかってほしいとの妹様の想いでした。

「ありがとう、報われた気がする・・・」

と喪主様が妹様におしゃいました。

長い闘病生活の間、喪主様は、様々には様々な葛藤があり、どれだけ一所懸命介護しようとも、後悔と自責の念に駆られてしまうのだと思いました。

大切な方を亡くされた方に、私がして差し上げられる事はないのかもしれないけれど、せめて穏やかに故人様をお見送りできる様、全力でご遺族をサポートさせていただき、滞りなく葬送の儀を終える事が、私たち葬儀社の責務ではないかと考えさせられるご葬儀でした。