些細なサインを、見逃さない
当たり前のことですが、お葬式は何月何日に執り行われると元々決まった予定があるのではなく、いきなり連絡があるわけです。
病気でお亡くなりになることもあれば、不慮の事故でということもあり、お葬式はいつ何時せざるを得なくなるのかは、本当にわかりません。
最近では、家族葬が多くなってきているとはいえ、お世話になった方やご友人の方の葬儀となると訃報の通知が来ることも勿論あります。
親しい間柄であれば尚更参列したいという気持ちの方も多いものの、近年の感染症拡大の経緯から、せっかく訃報の知らせはいただいたが、逆に自身が参列することで、ご遺族は勿論、自身の周囲にも迷惑をかける可能性があるため、
無理に参列せずに弔電を送る、後日香典をお届けして、改めてお悔やみの気持ちを伝えるようにされる方も増えました。
しかし、故人様のご家族ともなると、自分の体調のことなど構っていられないとばかりに、大事な方がお亡くなりになられた後から葬儀が終わるまでの間、親族、親戚への連絡や葬儀社との打ち合わせなど忙しくなり、体力的にも精神的にも辛くなってしまい体調を崩される方もいらっしゃいます。
そのような時に我々スタッフが出来る事は何かないのか?と考えさせられる事がありました。
その日は、お通夜の打ち合わせの際から故人様の長女様が具合を悪そうにされていらっしゃり、喪主様とお話をしながら無理をされていらっしゃらないか目配りしておりました。
お通夜は無事に終了したのですがその後、やはり体調が思わしくないとのことで布団を敷かせていただき、そこで安静にされておられました。ただ翌日のこともあり喪主様と相談の上、念のためにと救急車を呼ばせていただきました。
病院に向かわれ、葬儀当日体調が完全に戻られたわけではありませんが、ご本人の強い希望もあり、葬儀・告別式には参列していただくことができ、ご本人も体調が優れないながらも少し安堵の表情を浮かべていらっしゃいました。
喪主様や他の親族と相談しながら無理がないよう出来る限りの対応はさせていただいたのですが、後から考えるともっと出来ることがあったのではないか?
打ち合わせから担当していた為、葬儀の日程の調整を、少し余裕をもってする。通夜は無理せず当日に万全の状態でお越しいただく。後日にお別れの会をする…など、提案することはいろいろとあったのではないかと考えさせられました。
その場で出来る対応というものは、その現場に立った者の経験によって幅が出来ると思います。葬儀や宗教的な知識の幅によってできる対応もあれば、人間的な道徳観や思いやりによってできる対応もあると思います。
今日よりも明日と、日々勉強や先輩の経験を吸収すること。いろいろな価値観を知るために本を読んだりすることなどをしていくことにより一人の葬儀社の社員としてよりも、人間として幅を持たなければいけないと感じさせられた経験でした。
冒頭申し上げたように、人はいつ亡くなるかわかりません。明日急にご自身の大事な方が亡くなるといったことが起こるかもしれません。
その時に自分の体調や生活の状況がどのようになっているかもわかりません。
それでも、大事な方をしっかりと送って差し上げなければなりません。
そんなご遺族に対して、我々は些細なサインも見逃さないように出来る限りの対応をさせていただくこと、つまり些細なサインをしっかりとくみ取った先に、安心して故人様を送って差し上げることができる環境があるのではないかと思います。
そしてその環境を提供することが我々葬儀社ができる最低限の使命なんだ、と。