「お棺を親族がお手沿いしながら霊柩車にお乗せして、扉を閉めてご出棺」というのが大阪市内でのお葬式のほとんどで見られるクライマックスシーンです。
しかし、最近増えてきているのが、芸能人のお葬式などでみられるお骨でのお葬式、いわゆる「骨葬」です。
よくある「密葬+お別れ会」は、遺族や近親者のみでお葬式をして火葬した後日に、会葬者を招待(招待状を送る形を取って人数を把握できる事も特徴かもしれません。)してお骨をご安置してお葬式(会食だけという場合もあり)をします。
芸能人だけでなく、一般でも骨葬という選択肢をとる方が増えてきました。
当社が担当した骨葬の中でも、忘れられないものがあります。
喪主様が相談に来られたのは、海外でお亡くなりになったお母様の骨葬です。
お葬式は現地にて行われました。
慣れない海外でのお葬式を終えて、お骨を抱いて帰ってきた喪主様は何か納得がいかず、
当社に相談に来られました。
「いくら母の育った国だとしても、言葉もわからず、風習もわからない中で行われ、何がなんだか・・・。もう一度、自分の手で母を送りたいんです。」
希望をお聞きしていると、
「わたしの描いた絵を飾りたいのです。」
「喪主様の描いた絵ですか?」
絵を描くことを仕事としていらっしゃる喪主さまが、
最新の作品だからと持ってこられました。
「賞を頂いたのですよ。」
確かに素晴らしい絵ですが。。。
故人様の描いた絵や撮った写真を飾る事はよくある話ですが、喪主様の功績を称えるものを飾ることなど、聞いた事ありません。
会葬者にとって、故人様を偲べるものにはならないので、ただの自慢のように見えてしまうのではないかと心配になりました。
しかし、よくお話を伺って喪主様にとっての今回のお葬式の意味を知ると、心配は飛んでいってしまいました。
「母とは、死に際にやっと若いときにケンカして以来、20年ぶりに会ったのです。母はずっと私のことを心配してきたことと思います。兄妹や父とも離れ離れになっていて、このお葬式を期にこれからは家族仲良く助け合っていけるようにしたいと考えているのです。」
いつもは、ご逝去直後に取り紛れて行われるのがお葬式ですので、突然の知らせで仲たがいしている親族も来たり来なかったりで、何となくやってる間に終わってしまったというような場合が多いのですが、骨葬では時間と気持ちの余裕があります。
喪主様は、兄妹全員に声をかけ、初めて会う甥や姪などにもなるべくたくさん集まってもらえるようひとりひとり説得し、ご葬儀当日には30名を超える親族様が集合されました。
自分の絵を飾った場所は、故人樣のお骨が安置された祭壇のすぐ脇です。
絵は、参列者に向けて用意したのではなく、亡くなったお母様に自分の成長した姿を見て欲しいという想いからでした。
ご葬儀の後の食事の際には、全員の自己紹介から始まって、お子様がピアノを演奏したり、お手紙を読み上げたりと、まるで故人樣を囲んでのお食事会のような賑やかなご葬儀になりました。
「生前中に本当はこうして集まりたかったのだけれど、大人になるとなかなかそんな事はできないもので、こういう形でもう一度ご葬儀をすることで、わたしはもちろん、親族様みなも、母と仲直りできたのではないかと思います。」
そう言って晴れやかなお顔で、お骨を抱いて帰る喪主様の後姿を見て、お葬式の形に決まりはないのだなと改めて思いました。