一生のうちに、そう何度も経験することがないお葬式。
一つのお葬式を滞りなく進めるために大勢のスタッフが携わっています。
たとえば、葬儀社、花屋さん、司会者さん、貸衣装屋さん、貸布団屋さん、斎場職員、料理屋さん、テント屋さんなど。
その中で特に、ご遺族みなさまと触れ合う機会が多いのが私たち担当者。
そして、『 献茶さん (お世話する方)』と呼ばれる方々です。
『献茶さん』というのは、主にご遺族、ご親族、そして、お寺様を接待する女性スタッフのことであり、仕事内容は、お通夜やお葬式当日にお茶やおしぼりを配るのはもちろんのこと、お参りに来られた方々へのご案内、宗教用具の用意、お寺様の着替えの手伝い、式場や控室の用意、後片付けやトイレ掃除など、仕事内容は多岐にわたります。
ある意味、葬儀のプロフェッショナルと言っても過言ではありません。
そんな彼女たちも仕事に徹しきれないときがあるそうです。
それは、ご遺族が故人様と最後の別れを告げる時です。
あるご当家は、働き盛りの20代の若いご子息を亡くされました。
葬儀の現場に入っていた献茶さんは、自分も同じ年頃の子供がいるせいか普段より一層熱の入った仕事をされていたように私には感じられました。
当日、葬儀式が終わり、最後のお別れをするため静かに棺のふたが開けられると式場の中は深い悲しみの渦に包まれました。
悲しみの中、献茶さんはうつむきながら黙々とご遺族の方々へ故人様にたむけるお花を配っていました。赤く目を腫らし涙をこらえて・・・・。
仕事という観点から見れば、プロとして失格なのかもしれません。
しかし、そんな瞬間に垣間見える人間としての温かみが、ご遺族へ接する時の本当の優しさにつながるような気がしてなりません。