「最近、近所の○○さんがさ~。 そうそうそう。 アハハハハ。 」
「芸能人の○○によく似てるって言われない? そ~やろ~。 ギャハハハハ。 」
これらの会話は、私が故人様を霊柩車にお乗せして、火葬場まで移動している中、一緒にご乗車されましたご遺族お二人の会話です。
そしてこのお話は、私がやっとご葬儀の現場の担当を任せて頂ける様になり、色々な形のご葬儀を経験し始めていた頃のお話です。
故人様が病院でお亡くなりになられ、ご自宅に帰られるのは無理だという事で、弊社の所有するご安置施設の方でお預かりをさせて頂きました。
通夜、告別式を行わない直葬のプランでしたので、火葬日当日、ご遺族にお集まり頂き、安置施設で最期のお別れをして頂きました。
短いお時間でのお別れではございましたが、最後にお柩の上へ花束を置いて頂き、霊柩車の方へご上棺。
そしてあっという間にご出棺のお時間です。
一緒にご遺族のお二人も霊柩車にお乗りになられ、故人様、ご遺族二人、私の四人で火葬場の方まで向かう車中での会話が冒頭の世間話です。
ここまでお読みになられた方はどのように感じましたでしょうか?
故人様が可哀想に感じますでしょうか。それとも、ご遺族のお二人が常識のない人達に映りますでしょうか?
私はそうは思いません。
なぜかと言いますと、ご遺族の会話の最後におっしゃられた一言。
「この人は本当におしゃべりが大好きでね。いつもこうして三人でバカみたいな話をして笑ってたのよ。湿っぽいのが嫌いな人だから、最期もいつも通りに、笑って見送るわ」
実は故人様のご要望に応え、ご葬儀は身内のみでの直葬をお選びになられたという事でした。
そして最期はご自身達の送りたい形で送ってあげる。
必ずしも世間一般の送り方が正しいと言う訳ではございません。
色々な考え方、形があって良いと私は思います。
この時、私が感じたのは、決して
小さなご葬儀=淋しいご葬儀
ではないという事です。規模の大小に関わらず、送る側の想いがあれば一緒だということです。
一体、誰の為に行う事なのでしょうか。
その事を初めて感じ、教えて頂いたご葬儀でございました。
おしゃべり好きな故人様に暫く会えず、お話することがたくさんあったのでしょう。
火葬場へ到着するその時まで、車内は大きなしゃべり声と笑い声で溢れておりました。