それはご逝去のご連絡をいただき、ご自宅へお伺いした時のこと。
お部屋にはご高齢のご夫婦が二組、四十代のご夫婦と若い女性が四名いらっしゃいました。
喪主様にご挨拶をする為、どなたが喪主をおつとめされるのかをお尋ねしたところ、まだ二十代前半の長女様が喪主をされるとの事でした。
今までは自分より年上か、若くても同年代の四十前後の方が喪主を務められる葬儀がほとんどで、自分より一回り以上も年の離れた女性が喪主というのは初めてでした。
しかもカタチ上の喪主ではなく、葬儀のすべてを長女様が取り決めておられました。
終始気丈に振舞われ、涙一つ見せない堂々とした対応に再度驚かされ、お通夜、告別式の挨拶も見事なものでした。
故人との思い出の写真をスライドショーで見ながらのナレーション、派手好きなお母様の好きだった赤、ピンクを中心とした祭壇。
最期のお別れの際にはやっと重圧から解放されたのか、喪主様の顔から一人の娘の顔に戻られ泣きながらお母様の傍から離れられませんでした。
ご葬儀後に喪主様から
「色々とお世話になり有難う御座いました。やっぱり事前にご相談し、見積もりも作っていただいたお陰で本当に助かりました。最後まで無事に喪主を務めることが出来ました」
と、笑顔で仰っていただけました。
今回、葬儀経験のない若い喪主様が何の迷いもなく進められたのは「事前相談」をされていたからというのも大きな要因の一つだったそうです。
前もって、祭壇の色の事やナレーションを読むときは写真をみんなに見せてあげたい。親しい人達だけで最期は見送ってあげたい。と決めておられました。
今やネット等で簡単に葬儀社を探す事が出来ます。
「生きてるうちに葬儀の事を考えるのはちょっと・・・」という時代ではなくなりつつあります。
「終活」という言葉が当たり前になったように、ご自身の事で相談に来られる方も多くいらっしゃいます。
自分の葬儀は自分で決めたいとお考えの方、子供達には迷惑をかけたくないからと資料を集め、葬儀社や葬儀の内容をノートに書き残している方。
葬儀に数多く参列したことのあるご年配の方でも、いざ喪主をつとめるとなると全然わからないと言われる方がほとんどです。
人生の中で喪主をつとめる機会というのは、そう滅多にはございません。
わからなくて当たり前です。
昔は近所の方の中に葬儀に詳しい人がいて、色々とアドバイスをしてくれたものです。
しかし今は家族葬が主流となり、周りに葬儀に詳しい方がいないという状況が多くなっています。
突然に訪れる大切な人の死という悲しみの中、正常な判断もままならない状況での葬儀社との打ち合わせ、言われるままに葬儀は進み、終わったあとにとんでもない金額を請求されるというのはよく聞く話です。
事前に全体の流れやおおよその金額、何を用意し何を決めておけばよいのか、知っていると知らないでは大きな差がでます。
また、そんな葬儀を手伝ってくれる葬儀社選びは本当に重要です。
自分の思い描く理想の葬儀をしてくれる葬儀社かどうか、祭壇で選ばれる方、金額重視で選ばれる方、スタッフの対応で選ばれる方、選ぶポイントも人それぞれ違うとなれば、同じ金額でも内容も葬儀社によっては大きく違います。
「一生に一度しかない、やり直しが出来ないのがご葬儀です」
私たちはこの言葉を合言葉のように、事前相談にお越しになられるお客様にお伝えしております。
事前のご相談は、金額やどの式場でするのか、どんなお棺がいいのか、どんなお花がいいのかを決めるためだけではありません。
皆様の葬儀に対する思いを、スタッフが共有することこそ最大の目的ではないかと私は考えています。
どんな立派な祭壇も、式場全体に故人を手厚く想う気持ちがなければ、ただの飾りです。
このたびの若い喪主様の想いも、スタッフ一同で共有させていただけたことが、喪主様のお言葉につながったのではないでしょうか。
こういったお言葉を胸に、「事前相談しておいてよかった」と言っていただけるような納得いただけるアドバイスを、今後も丁寧にさせていただきたいと思います。