葬儀のカタチ…大阪、生野の老舗葬儀社社員が語る、本当のお葬式の話
家族葬という言葉が浸透し、地域で行っていた葬儀は身近な者のみで行うものへと徐々に変化し、そして、新型コロナの影響を受け、今また葬儀の形は大きく変わろうとしています。
先日ご葬儀をお世話させていただいた方が初めて弊社に相談に来られたのは、
緊急事態宣言が発令される数日前の事でした。
「親戚もお寺も関東にあるのですが、母が亡くなった時、今の状況で関東から来てもらうのは危ないし、向こうの親族は関東で通夜葬儀をすればいいと言うし、どうしたものかと・・・」
「では大阪で先に火葬をすませ、コロナが落ち着いてから改めて、東京で葬儀をされてはいかがですか?」
「葬儀をせずに先に火葬ですか?」
「はい。骨葬といいまして、先に火葬を行い、ご遺骨をお祀りし、葬儀を行うことも可能です。骨葬なら急がなくても、皆様がご都合が良いときに葬儀を行うことができます」
「そうですね、義妹夫婦と相談してみます」とその方は帰られました。
その後、緊急事態宣言が明けしばらくしてから、
「母が亡くなりました、大阪では火葬のみ行おうと思います」と連絡がありました。
入所されていた介護施設で看取られたとの事で、介護施設へ伺い、どのようにお母様を見送るか、お話をさせていただきました。
幸い、施設の部屋をそのまま使うことができたので、翌日、介護施設から火葬場へ
出棺することになりました。
「火葬にはどなたが立ち会われますか?」
とお伺いしたところ、
「私一人です。実は関東の親族は父方の親族ばかりで・・・。
父は早くに亡くなっていますが、盆、暮れ正月、などの付き合いはずっと続いていて、
口には出しませんでしたが、親戚づきあいは大変だったと思います。
「お母様、ご苦労されましたね」
「私も主人を早くに亡くし、その後母と暮らしはじめて・・・。
誰にも気を遣わず気ままな女二人暮らしを楽しみましたが、やっぱり歳をとると家で介護できなくなり、ここでお世話してもらうことにしました。ここは職員さんも本当に良くしてくださって・・・。お友達もたくさんいて、楽しかったみたいですよ。母は長生きだったから、一番の古参になってしまいましたが・・・もう8年もいるんです」
「父に、主人に、とうとう母まで・・・。いつも見送ってばかりで損な立場だと思うけど
先に逝くわけにもいかないし・・・。向こうでのお葬式は、向こうの家にお任せすることになるから、だからここは1人で見送ろうと思って。いつも2人だったから」
と、お母さまを見つめながら、寂しそうに微笑まれました。
翌日の出棺は朝早かった為、前日の夜に納棺させていただき、棺にお花をお手向けいただきました。施設の方も仕事の合間に花を手向けに来られたそうです。
翌日、お母様が過ごされた部屋で最後のお別れを終え、施設を出発する時、たくさんの
職員の方が玄関で見送りに出てきてくださいました。
たくさんの方に見守られ、お母様は長く過ごした施設を出発されました。
火葬場へ向かう車内で
「主人の葬儀は広い式場に祭壇もあって、家族だけでのお葬式だったけど、やっぱり大変
だった。今回は一晩母とゆっくり過ごして、大好きだったお花で棺の中をいっぱいにして
あげることも出来たし、いつも見送る立場だけど、こんな優しい気持ちで見送ることが
出来たのは初めてね、こんなお葬式もいいかもしれない、本当にありがとう」と、言っていただきました。
その時のお母さまの表情を今でも忘れる事ができません。