「寄り添いの意味」
世界18位。中でも15歳から29歳の年代別では世界2位。これは2019年度、世界における日本の自殺者数の順位です。
2020年10月度は前年比139%と自殺者数は更に増え自殺大国日本と言えるとの報道を耳にしました。
特に今年はコロナウィルスによる影響もあり、その数は増加の一途を辿っているようです。テレビ等でも芸能人の自殺のニュースが立て続けに報道され、決して他人事ではなく身近なことであると実感しました。
そんなニュースが飛び交う中、まさに自死を選ばれた方のご葬儀を担当することになりました。
これまでも、ご当家様の事情はもちろん、死因などにかかわらず、ご遺族に寄り添いお話を伺い、最良のお別れの時間を提供できるようにと、ご提案をしてまいりました。
この時もまずはお話をお伺いしようと、喪主様である奥様の元へ向かいました。
突然のご主人の不幸、お子様のおられないご夫婦であったため、奥様にはご両親が付きっ切りで、一心に支えておられました。
予期せぬご主人の死によるショックと動揺、深いお悲しみは隠すくことはできず、奥様のお話を十分にお伺いできないまま、ご葬儀は粛々と進んでいきました。
ご参列されたご遺族のお悲しみも深く、皆さま口々に故人様との思い出や、生きていれば迎えることができたであろう将来のことなどを語っておられました。
私は、奥様がそれらの言葉をどんなふうに捉えられているのであろうか?それら全ての言葉が「一番そばに居たはずなのに気付けなかった、自殺を止めてあげられなかった」と自責の念に苛まれていらっしゃるのではないかと、傍らで見守るしかありませんでした。
同じ『ご遺族』であっても、同じ慰めの言葉を掛けられても、恐らく奥様の感じ方は他のご遺族とは異なり、そしてその悲しみの深さも計り知れないのではないか・・・。
もちろん悲しみの度合いは比較できるものではなく、間違いなく傷が癒えるまでの時間は長く辛いのだと思います。
そしてその悲しみ、痛みはご自身が歩みを進めることで少しずつ癒されるもので、決して私が癒せるものではないのではないか?ならばせめて私は私の持てる力を使い、この葬儀の間は、奥様がご主人のことだけを考えて過ごせるよう陰で支えることに徹することにしました。
最後まで奥様とゆっくりとお話することはかないませんでしたが、全ての儀式を終え、ご主人のご遺骨を抱いて帰宅された時、私に対して終始うつむき気味で表情をお見せいただけなかった奥様がほほ笑みながら
「無事に送ることができました、本当にありがとうございます。これから前を向いてがんばります」とおっしゃってくださいました。
そのお言葉をいただいた時、寄り添うということは決してお話をすることだけではなく、陰で支えとなることも寄り添うということなのだと気付きました。
時が経ち奥様がふと今回のご葬儀を思い出された際、『辛く悲しい葬儀』ではなく『心の傷を癒す為のスタートライン』だったと思っていただけるように、そして葬儀社に勤める者として様々な『死のカタチ』に対して真摯に向き合い、そして寄り添い続けようと心に決めた葬儀でもありました。