深夜に連絡が入り、静まりかえった病院へお迎えに伺う。
ご遺体を寝台車で搬送し自宅へご安置。
菩提寺様がある場合は、自宅に来ていただき一番初めのお勤め(枕経)をいただく。
深夜時間帯では、ご遺族の体力的負担を考慮し打ち合わせの時間を調整する。
そのまま、打ち合わせをするのか、日が昇ってから始めるのか。
打ち合わせが始まるとお悲しみに浸る暇もなく、実務的な話がまっている。
お葬式には誰を呼ぶのか、その方の宿泊先から食事の段取り。
故人がお世話になった方々にも声を掛けるのか。
また、葬儀費用は誰がどこから捻出するのか、兄弟が集まれば相続の話があるかも・・・。
慌ただしい時間のなかで亡き人とゆっくりと過ごす時間は限られてくるのではないでしょうか。
ご親族や参列者、葬儀にたくさんの人が集まればまた更に慌ただしくなります。
しかし、どんなに慌ただしいお葬式でも、式場にいる全員の気持ちが一つになっていると
感じる瞬間があります。
式典が終わり、喪主様からご挨拶をいただきます。その後、お柩の中に花や供物を納めて
最後、ご遺族の方々にお柩近くへ集まっていただき、その空間にいる全員で・・・。
ご遺族にとってお顔を見ての本当の最後、「お柩のふたを閉じる瞬間」
まさに、この瞬間ではないでしょうか?
ご遺族、スタッフ、花屋、お寺様、会葬者の全員で。
近くにはいない会葬者も、この最後の瞬間は何か特別に思われることがあるご様子です。
いま、この瞬間だけ全員の心は亡くなった方への様々な思いで一つになります。
時間にするならば数秒程のこの一瞬が、お葬式のクライマックスではないでしょうか。
いよいよ、火葬場へ向けて出棺する。
本当のお別れと思った瞬間に故人様の笑った顔、泣いた顔、怒った顔、いままでの様々な思い出が甦る。
段取りに追われていたスタッフもその静かな空間で葬儀の意味を感じ、その場面に立ち会うことができた故人様とのご縁に感謝の気持ちが溢れてまいります。
どうぞ、安らかに・・・・・
故人様の人生の締めくくりに立ち会わせていただいているという重み。
この重みを本当にどれだけ理解できるか、理解しようと努めるか。
私達は、葬儀の段取りを通じての数日間でご遺族の思いをすべて受け止めるなんてことは
到底できません。
ただし、その思いを具現化する一端はお手伝いさせていただけるはずです。
そしてご遺族が喜んでいただけることがやはり私達の最高の喜びとなります。
「気持ちが一つになる瞬間」とは、私達がこの仕事に誇りを持てる瞬間でもあるのです。