「準備」:大阪市(生野区・東住吉区・天王寺区・北区・福島区・都島区)堺市の老舗葬儀社
「兄が亡くなってお葬式をお願いしたいのですが、少し特殊で、、、」
電話口の方は悲しさと困惑が混ざったようにお話しておられました。
お葬儀の打ち合わせのため故人様の自宅へ伺うと長男様夫婦と三男様夫婦がいらっしゃり、皆様とても落ち着いた様子でアルバムを見ておられました。
亡くなられたのは3兄弟の次男様。ご家族様曰く、頭が良く、しっかり者で、超が付くほどの几帳面な人だったとの事。
「僕たちも普通のお葬式しか知らなくて、こんなこと出来ますか?」と言われ渡されたのは1冊のノート。
そこには故人様が書いた自分のお葬式への希望が箇条書きにされていました。
・宗教家は呼ばず無宗教で執り行ってほしい。
・主役は自分ではなく、亡くなった妻だと思ってほしい。
・妻のイメージに合わせてお洒落な祭壇にしてほしい。
の3点。
伺うと、次男様はとにかく奥様が大好きで、部屋にある本棚にはアルバムがビッシリ。几帳面な性格を表すように1からナンバーリングされており、最後は72番。
そして奥様へ向けたお手紙が100通以上。許可をいただきいくつか読ませていただきましたが、いわゆるラブレターのような甘い内容では無く、頭の良い故人様が書いた綺麗な日本語で奥様への感謝の言葉で埋め尽くされておりました。
長男様と次男様の意向を伺うと、次男様の希望をできる限り叶えてあげたいとの事。
1番と3番に関しては問題無し。祭壇もいくつか提案させていただいたデザインの中からお二人の奥様を中心に選んでいただきました。
問題は2番です。5年前に病気で亡くなった奥様の葬儀は既に執り行われています。どうやって奥様を主役にして次男様の葬儀を執り行うか。
私も含めてみんなで「う~ん」と唸りながら考えますがなかなか良い案が出てこない。
全員が煮詰まってしまい、一旦問題は先送りにしてできる事から話し合っていくことにしました。
打ち合わせの途中に無宗教のスタイルでもお花が好きだった奥様のために献花をするという話になり、三男様が「やっぱり愛情を表すなら赤いバラになるのかなぁ」とおっしゃり、三男様の奥様が「でも赤いバラって雰囲気の人じゃなかったよね」とおっしゃる。
その話を聞いている時に私の中に1つの記憶が蘇りました。
以前にお花が好きだった故人様の葬儀を担当させていただいた際に喪主様から教えていただいた花言葉の数々。
その中の一つ、カーネーションの花言葉。様々な色があるカーネーションは色ごとに花言葉が違っている。代表的な赤いカーネーションは「母への愛」だから母の日に使う。
そして白いカーネーションは「私の愛は生きている」というもの。
これを皆様にお伝えしたところ故人様から奥様への気持ちとして献花しようということに。やはり葬儀の主役を奥様にすることは難しいが、故人様から奥様への感謝や愛情を主役にした葬儀にしようと決まりました。
当日、式場に大きな紙袋を持って皆様が来られました。中には故人様と奥様の2ショットを中心に抜粋したアルバム達。
「準備しながら見ていたけど落ち着いてみんなで見て、改めてゆっくり話をしようとなりまして」との事。
打ち合わせの際には皆様難しいお顔をされておりましたが、この時は晴れやかなお顔をしておられました。
終活という言葉が一般的になり、葬儀社で勤務していると生前に自分が亡くなった後の準備や遺言を残されている方も増えてきているという印象を受けます。
そんな中でも今回の故人様は細かく希望を残されており、その分残されたご家族は少し大変な思いもされていましたが、故人様の希望を叶えてあげたという達成感みたいなものもあったように感じました。
葬儀終了後、長男様から「今までお寺さんが来るお葬式しか行ったことなかったけど弟の為だけの特別なお葬式っていうのも良いですね。最初から最後まで難しいことばっかり言ってごめんね」とおっしゃっていただきました。
どんな葬儀も同じものは1つとしてなく、残されたご家族からするとその1つ1つが全て特別な葬儀となりますが、今回のご家族様と一緒に考え、一緒に形を決めていくという経験をさせていただき、葬儀をより一層大切に尊いものにするためにも知識や経験を積むという葬儀に携わる者としての努力に終わりは無いんだと気を引き締めていただいたように感じました。