先日、私はこれまで以上に責任の重さを感じる葬儀を経験しました。
それは故人様が40才代でまだまだ働き盛りの男性、奥様と2人のお嬢様の4人家族の担当をさせていただいた時のことです。
通夜が終わり、奥様は私に「相談があるのですが・・・・・・」とおっしゃられました。
すこしの沈黙の後に手紙を差し出されたのです。
「この手紙をお葬式で読んでいただきたいのですが、駄目ですか?」
私は「ご自分で読まれてはいかかですか」と、提案いたしましたが、 奥様は「手紙を読む自信がない」とおっしゃられました。
手紙にはご主人を病気で亡くされた悲しみや感謝、そして子供たちを任せてとのご自分の決意やお見舞いに訪れた方々への感謝の気持ちが書かれていました。
「あなたが最後に“ありがとう”と言ってくれたこと。それが私たちの心の中に残り、生きる力になります」と、文章が結ばれていました。
手紙からは、奥様のご主人に対する溢れんばかりの思いが伝わってきます。
葬儀当日、いちばん悲しいはずの奥様が子供たちを励まし、周りの方々を気遣う姿には心が打たれ、私も熱いものが込み上げてきました。
お手紙は葬儀の準備など疲れ切ったご様子を見て、私が代読させていただくことになりました。
ご主人と出会われて、数十年間重ねてこられた奥様の大切な思いを、ゆっくりと心を込めて読み上げさせていただきました。
ふと周りに目をやると、下や上を向いたまますすり泣く声が聞こえてきました。
そのとき私は、奥様の気持ちを式場にいらっしゃる皆様に伝えることができたのだと安堵しました。
数ページの手紙、時間にすると3分程度とごく短い間ではありましが、これまで以上に
重さを感じる時間でございました。
このご葬儀はお別れではなく、故人様とご家族が「夫婦・親子」として向き合う大切な空間だったのかもしれないと考えた瞬間、かけがえのない空間を提供するものとしての責任を改めて強く感じ、やり直しのきかないご葬儀だからこそ私達葬儀スタッフも真剣勝負で対応しないといけないと改めて考えさせられました。