我々はご逝去直後のご安置の際やご納棺の際に、故人様の目や口が開いていると出来る限り閉じさせていただいております。
やはり、一般的には半分開いた口はだらしなく見え、半分開いたうつろな目ではどこを見ているのかわからないなど、そのご様子をあまりよく感じない、生前の故人様ではないとおっしゃる方が多いからです。
先日担当したご葬儀でのことでした。
ご逝去後のご安置の際には気になる程ではなかったのですが、お通夜の開始前に故人様のお身体やお顔に気になるところはないかとお柩の窓を開いた際、目と口が半分ほど開いてしまっておりました。
ご遺族はまだ式場にはいらっしゃらなかったので、すぐに処置をしたのですが完全には閉じることができませんでした。
ご遺族が式場に到着されその旨をお伝えしこの後の処置をお決めいただくためにお顔を確認していただきました。
故人様のお顔を見られたご遺族の口より発せられた言葉は、私の予想していたものとは違った内容でした。
「お母さんの顔、寝てる時のいつもの顔やわ…」
お話を聞くと生前の故人様の寝顔はいつも目も口も半分ほど開けたままだったとのこと。
『病気が悪化してしんどかっただろうに…苦しかっただろうに…でもようやくリラックスできたんやね?』と涙ながらにお話しされました。そして当然ながらお顔はこのまま自然のままにしておいてほしいとのことでした。
後ほどご遺族に以前にお寺様より聞いた【半眼半口】のお話をさせていただきました。
「大仏様や仏様も半眼半口なんですよ。寝顔がそうだったということはきっとお釈迦様のようにお気持ちの優しい方だったんでしょうね。なのでお母さまはもっと仏様に近づかれたのかもしれませんね?」その言葉を喜んでいただけたのか、後から到着されたご親族様に対して「いつもの寝顔やろ?楽そうやろ?仏様の顔と一緒やねんて!」と嬉しそうに話されておりました。
そんなお姿を後方から見ていて、私は自分たちの当たり前に囚われ過ぎていたのだなと感じました。
故人様を綺麗にする技術はもちろん必要です。
またその所作のひとつ1つに心をこめて丁寧に行うこともまた当然のことです。
しかしながら「ご遺族にとっての故人様らしさ」はやはりそのご遺族にしかわかりません。
ご遺族のお話をよく聞き故人様にとってはもちろんご遺族にとっても何が最良なのか?を考え、そのご遺族のお気持ちに寄り添うことが大事であること。
また、『寄り添う』とはどういうことなのかを身をもって体感できた。
そんなご葬儀だったと思います。