「あーっ、用意するの忘れた!どうしよう!!」
お葬式の打ち合わせの際、度々このような光景を目にします。
お葬式を行うにあたり、ご用意頂く物の中の一つに『 ご遺影 』があります。
ご遺影の原稿について、ご遺族からよく聞かれる質問が
「どんなものでもいいの?」
「大きさは?集合写真じゃ駄目?」
「結婚式の時の写真なんだけど・・・」
私共からのアドバイスとしては
「できるだけ明るく鮮明に写ったものがベストです」
「集合写真でも可能です。ただ小指の先ぐらいの大きさを表彰状ぐらいの大きさに引き延ばすので、多少ボヤけてしまいます」
「結婚式の場合でしたら、白いネクタイの色を黒色にすることもできます」
最近では画像の合成技術も発達し、背景の変更はもちろん、顔の陰影の調整や服の着せ替えも出来ます。
また、片方の肩が人や物で隠れていたとしても、反対側の肩が見えていれば見えない方の肩を作ることができますし、カバンのひもや蝶ネクタイも自然な形で消すことができます。
そのようにして作られる遺影写真にまつわるちょっとしたお話。
病気で旦那様を亡くされ、奥様が喪主を務められたご家族。
お通夜の日、ご家族とご親戚の方々が式場へと到着し、祭壇中央にお飾りしてあるご遺影を見て喪主様がポツリと一言。
「何だかムスッとしてる気がする」
そう言われてみればムスッとしているように見えなくもなかったのですが、私どもからしてみたら穏やかな笑顔だったので、その時は何故だろうと疑問に感じていました。
通夜・お葬式が無事に終わり、後飾りの白木の祭壇をご自宅にお届けし、葬儀後の説明が終わると、ご家族の方もホッと落ち着かれて和やかな雰囲気がお部屋を包みました。
喪主様がご主人の遺影写真を眺めながら
「お父さんの写真、今はニッコリ笑顔でありがとうって言ってるような気がする」
と微笑みながらおっしゃられました。
お通夜の晩、ムスッとした顔と言っていた時は、どうやら故人様が呼ぶなと言っていた反りが合わないご親戚まで来ていて、会場の空気が重たかったそうです。またお葬式当日にも、そのご親戚からお供えして頂いた二つの供花が、ご読経中に両方共花びらがポロッポロッと落ちて、余程そのご親戚に来て欲しくなかったんだなと吹き出しそうになったという話をしてくださいました。
お葬式で最後に残るのは位牌・お骨・写真だけと言われるように、ご遺影はお葬式において重要なポジションを占めています。最後の心の拠り所といっても過言じゃありません。
ご遺族の見方や状況、故人様の感情によっていろんな表情を見せる写真、それがご遺影の奥深さなのかもしれません。