人生のしまい方…創業明治10年 生野のかわかみ葬祭スタッフが語るの現場の声
新芽が息吹、蕾を膨らませ、花が咲き、けれど、花はいずれ萎んで枯れて散ってゆく。
人の人生も本来はそうあるべきだ、という話を聞いたことがあります。
先日、ご葬儀を担当させていただいた故人様は、数年前に奥様を亡くされ、お二人の
息子様も独立し、それぞれにご家庭があった為、一人暮らしをされておられたそうです。
葬儀の打ち合わせの際、ご自宅に伺って一番驚いたのは、家がきれいに片付いている事
でした。男性の一人暮らしとは思えない程、整理整頓されており、奥様の仏壇にも新しい
花が飾られ、穏やかな暮らしぶりが伺える様なご自宅でした。
更に驚かされたのは、ご自身が亡くなった後の事を事細かに記されたノートを2人の息子様宛に残しておられたことです。
少し拝見させていただきましたが、息子様達に負担をかけまいとする、お父様の気遣いに
溢れていました。
長男様のお話によると、手術をすれば完治する可能性も残っていたそうですが、お父様は
ご自身の病状も余命もすべてご存じのうえで、残りの人生をご自身の人生をたたむ時間に充てられたいと、全ての延命治療を断ったそうです。
初めは、必死で病院に行く様に説得したそうです。少しでも長く生きて欲しい、孫の成長も
見てほしい、少しでも可能性があるなら、手術を受けてほしいと・・・
しかし、お父様の決意は固く、必死で説得する息子様達に、笑顔で
「病院は好きではない。もう十分生きた、余生は穏やかに暮らしたい」とおっしゃり
残された時間を、まるでご自身の人生を振り返るかの様に、身の回りの片づけをされて
いたそうです。
息子様達も、そんなお父様を見ているうちに、こんな人生のしまい方もあってもよいのではないかとお父様の意思を尊重する事にされ、それからは仕事が休みの日は極力お父様と
過ごされるようにされたそうです。
1年近くたった頃、お父様がご自宅で倒れられ、救急搬送された先でその日のうちに
お亡くなりになられました。
「病院は好きではないと言っていたが、本当に1日も病院にいなかった。苦しむこともなく、穏やかな、父が望んだ最期だったと思う」
「これで良かった」と長男様がおっしゃいました。
息子様お二人が、これで良かったと思えるようになるまでには、沢山の苦悩、葛藤があったことは言うまでもありません。
「父は人生のしまい方を教えてくれた」という次男様の言葉が印象的でした
今回、お世話させていただいたご葬儀は、穏やかな、皆様納得されてこの日を迎えた、
そんなご葬儀でした。
ただ、医療が発達した今、寿命を、自分自身や家族が選ぶ時代になってしまったのかも
しれません。
そう考えた時、葬儀の日までにご遺族は希望、絶望、苦悩、葛藤、後悔、そういった様々な感情を乗り越えた方、受け入れた方、まだお気持ちの整理がつかない方など
様々な方がいらっしゃるのだと改めて考えさせられました。
葬儀の日までの、ご遺族の方々が過ごされた日々、そういった事に寄り添いながら、
今後も葬儀のお手伝いをさせていただかなくてはいけないと、とりわけ感じた
ご葬儀でした。