友人への想い
親しい友人に母を見送ってもらいたい
「母を大阪へ連れて帰り、お葬式をしたいのですが日程はいつ頃でできそうですか?」
電話口で女性が少し慌てた口調でおっしゃられました。
お伺いすると東京の病院から大阪へ連れて帰り、地元でお葬式をしてあげたいというのが女性のご希望でした。
取り急ぎ、火葬場の予約状況を確認すると大変混んでおり、火葬までなんと6日間も待たなければならない状況でした。
「誠に申し訳ございません。市内にあるすべての火葬場をお調べしたのですが、大変混んでおりまして、もっとも早い日程で〇〇日のご葬儀になります」
「そんなに待つのですか、やっぱり母の体のことを考えたら大阪での葬儀は難しいのかな・・・どうしたらいいのかしら・・・」
「大変失礼ですが、お母様のご葬儀を大阪でしてさしあげたい特別なお気持ちがおありなんですね。ご希望をできる限り叶えてさしあげたいので、もしよろしければお教えいただけないでしょうか」と伺うと、娘様は私に話してくださいました。
お母様は大阪の下町で暮らしておられ、町内会の行事や毎朝のラジオ体操などにも参加されるほど活発で、地域に沢山のご友人がおいででした。
ところが数年前にガンが見つかり緊急入院。大阪での長い闘病生活の後、より最新の治療を受けるため東京のガン専門病院へ転院されたということでした。
たくさんのご友人がいらっしゃるので、東京へ行くのはなかなか辛いことだったでしょうが「病気を治して大阪へ戻ってくる」そんな思いで転院されたそうです。
ガンを克服するために頑張っておられましたが治療の甲斐なく、医師から余命数か月という宣告を受け、その後は娘様の自宅で穏やかに過ごし、体の具合が良いときは大阪での思い出を振り返りながら娘さんに仲良しのご友人の話をしてくれたそうです。
「隣近所のお喋り友達の○○さん」
「毎週、大阪城まで一緒にウォーキングをしていた○○さん」
「町内会の行事でいつも一緒の仲良しの○○さん」
目を輝かして楽しそうに話をしていたそうです。
お母様は仕事と育児に忙しい娘様の事を思ってか、大阪へ戻りたいとは一度も口にせず、そんなお母様の姿を見て娘様はずっと胸の奥で「大阪へ連れて帰ってあげて仲の良い友人に会わせてあげたい」と思い続けていたそうです。
今回、日程やご遺族の心労も考慮し相談を重ねた結果、まず東京で火葬をしてもらい、お骨で大阪へ連れて帰られることになりました。
葬儀は自宅近所の公民館で執り行い、口伝えのみのお知らせでしたが、たくさんのご友人がお別れにこられました。
その人数の多さに娘様はお母様が地域の方やご友人とのお付き合いをとても大切にしていたことを初めて知ったのです。
最近はコロナの影響もあり近親者のみの葬儀や、通夜・葬儀を省略して火葬だけの直葬も増えてきています。
手間や費用面を鑑みてそのような形式を選ばれる方もおられますが、どちらかと言うと故人様よりご遺族の意向が多く反映されているようにも思います。
ご遺族以外に故人様との最期のお別れをされたい方も、きっとおられると思います。
そういった方々のことも考えながら自分の葬儀を「どのような形で送りたいのか」、「送ってもらうのか」という思いを生前にご家族としっかり話し合い、互いに理解しあう事で「納得できるご葬儀」を執り行うことができるのではないかと感じました。
この気持ちは当社へ事前相談でお越しいただくお客様にもお伝えしたいと強く思いました。