好きな花言葉…創業明治10年・大阪・生野・東住吉・天王寺・北・福島の老舗葬儀社かわかみ葬祭のスタッフの思い
京都ではお茶室に活けるお花は、一輪挿しの野花を飾ることが多いと以前、教えていただいたことがあります。
目立たないが凛とした力強さを持つ野花本来の美しさを嗜むもという文化です。
今回担当させていただいた故人様もお花を愛し、お花が持つ本来の美しさを嗜まれる方でした。
徐々に寒さも和らぎ、春の陽気を感じようになった3月中旬、打合せに伺ったお宅の庭には色とりどりの花が咲き始めていました。
リビングに案内され、息子様夫婦とお孫様で葬儀のお打ち合わせを始めました。
「お花が好きな母だったので祭壇は華やかで質の良いお花を飾ってほしい」とのご要望。
打合せの最後に遺影写真の原稿をお預かりし拝見すると、そこには、色白で凛とした佇まいの女性が写っていました。
故人様は会社勤めをされながら家事や育児をされ、定年後は自宅の庭でお花を育てることが第二の人生の楽しみだったと息子様が教えてくださいました。
お人柄は物静かでおだやか。ほとんど声を荒げることはなかったそうです。
息子様が鮮明に覚えている出来事は、中学生の時に悪さをして怒られた時、冷静に淡々と怒る姿に背筋が凍るほど恐かったと話してくださいました。
通夜当日、ご家族が少し遅れて式場に到着され、
入口でお出迎えすると、「遅れてごめんね。娘がどうしても花を持って行きたいと言うもので」とおっしゃる喪主様の後ろでお孫様が大事そうにスミレの鉢植えを持っておられました。
「おばあちゃんが大事に育てていたお花なので柩の横に飾ってもいいですか」とお孫様が聞いてこられたので、「是非、飾ってあげてください」と柩の傍までご案内しました。
「おばあちゃんの育てた花が咲いたから持って来たよ」と話しかけながら、
お花を飾り微笑みかけていました。
「おばあ様はスミレの花がお好きなのですか?」と私が伺うと、
小さく頷き「毎年、小さな苗から少しずつ増やして、大切に育てていました」と教えてくれました。
「謙虚、誠実という花言葉もおばあちゃんにピッタリです」と笑顔で語ってくれました。
無事、お通夜が終わり、ご家族は隣の会食室で和やかに談笑しながらすごしておられました。
私は1人式場で翌日の準備をしていると、祭壇中央のご遺影が私に何かを語り掛けているような不思議な感覚に陥りました。
実はその日、式場の準備をしている際に些細な事で声を荒げてしまいました。
そんな私の心をまるで見透かされているような気がして、なんだか気恥ずかしい気持ちになってしまいました。
自分でも気が付かないうちに慣れてしまって初心を忘れかけていた私に、故人様がスミレの花を通して「謙虚」、「誠実」という大切な事を教えてくださったのかもしれません。
故人様が私に教えてくださった大切な事を胸に刻み自分と向き合い、決意を新たにこれからも日々精進して故人様のお世話をさせていただく所存です。