私たち葬儀社は、お客様に出来ない事を出来ないとお伝えする前に何とか
〝出来る方法を考え、提案する〟
ことが私達の存在する意味だと思っております。
そのように思わせていただいたのが、お酒が好きだったお父様のご葬儀でのこと。
喪主のご長男は長い間東京でお仕事をされていましたが、一昨年お母様がお亡くなりになられたのを機にお父様と一緒に暮らす為、大阪へ戻って来られたそうです。
お父様は病気がちな方で自宅で療養していたそうですが、奥様を亡くされた後、徐々に体調が悪くなり入院されていたようです。
元気な時は大柄でふくよかな体型でしたが、長い入院生活で最後はほとんど食事も摂れない状態で、お元気な頃の面影がなくなってしまったそうです。
「こんなに痩せてしまってよう頑張ったね。もう好きなだけ飲み食いしていいからね」
ご葬儀当日。
祭壇の前にはお父様の大好物だったお酒やたくさんの和菓子が供えられています。
そして、故人様のお顔はお元気だった頃のようなふっくらとした表情をされておられました。
実は喪主様との打ち合わせの際、
「何とか元気だった頃の姿をみんなに見せてあげたい」
そのお言葉に、どこまで出来るかわかりませんが、お湯灌でしたらお体を綺麗にし、髭剃り・お化粧の他、以前のお姿に少しでも近づけるような修復対応もしていただけますと提案いたしました。
喪主様もご参列のご親族様も以前のお姿の故人様を拝見され、大変喜んでおられました。
告別式が終わり、お柩にはたくさんのお花やお供えの和菓子が納められ、皆様でお父様のお口にお酒をふくませていただきました。
「こんな量じゃ足らんわ!!って怒られそうやな」
「よろしければお花の脇にでもお酒を入れてさしあげて下さい」
「えっいいの?それは親父も喜ぶわ!酔っぱらわんようにせなあかんで!!」
と、皆様で笑ってお別れをされておられました。
最後に喪主様とお話をさせていただき、
「今回は本当に色々と要望を叶えていただきありがとうございました」とおっしゃっていただきました。
このように、喪主様やご遺族のご要望をしっかりと受け止め、何を一番に考えておられるのか、どんな葬儀にしたいのかをお聞きし、把握しておかなければなりません。
なぜなら、式場や火葬場にはルールがあります。
出来る事と出来ない事が当然ございます。
お柩の中には燃えない物、金属類やガラス製品は納める事は出来ません。
しかし、ビールやお酒を紙コップに移して納める事は出来ます。
それでも葬儀後はもっとこういう提案をしてあげれたらと、反省させられる事ばかりです。
それでも、着実に一件一件の大切なご葬儀に携わらせていただく事でよりよい提案が出来、喜んでいただける事に誇りを持てるようになってきている自分もいます。
これも全て故人様やご遺族のおかげなのだと実感しております。