安心感を提供するということ―葬儀に対するご不安を取り除く
「もう川上さん来てくれたし安心です、今回もよろしくお願いします」
これはお客様からいただいたお言葉です。
この方は旦那様を亡くされたばかりで、ひと月経つか経たないかで、今度はお父様を亡くされました。
旦那様の時は打ち合わせで担当させていただき、今回はお父様のお迎えから行かせていただきました。
何のめぐりあわせか、前回と同様、病院ではなく警察署でのお迎えでした。
警察署の入口で待ち合わせのお時間になって、お姿が見えたので、かけよってご挨拶させていただいたときです。
「一か月前に経験したはずなのに、すごく不安で」
病院や施設のお迎えと違って、警察署へのお迎えというのは、いろんな意味でご遺族は大変な思いをされていらっしゃるケースが多く、何度と経験している私たちでもいつもとは違う緊張感があります。
その状況でいただいたお言葉が冒頭のお言葉だったということです。
ですから大変ありがたいお言葉であったのと同時に不思議な感覚もありました。
今思えば、この不思議な感覚というのは、一言で言うならプレッシャーだったのかもしれません。
すべてご葬儀が滞りなく終わった後にお礼やお褒めのお言葉をいただくことは経験がございますが、何もしていない、ご安置もまだこれからという段階での「安心です」というお言葉が、心の中でズシッと響きました。
確かに安心していただくということは普段から重要なこととして考えています。
ご相談に来てくださった方に少しでも安心して帰っていただく。
お通夜、お葬式と安心して終えられるようにサポートさせていただく。
ですが、ただありがたいお言葉だ、とは終わりませんでした。
最初の電話でのコンタクトから始まり、打ち合わせ、お通夜、お葬式、その後のアフター関係まで、その携わった一人ひとりが、一つひとつをできる限りの力でやり切った結果、安心していただけたわけで、ある種の信頼関係が生まれて、そして次は会っただけで安心していただけた。つまり、ひとつたりとも欠けてしまえば、そうはならないですし、我々への信頼や安心感はすぐに消えてしまいます。
普段からも歩いているだけで「かわかみさーん」と気さくにはなしかけていただける、私は担当させていただいたことの無いお客様に、
「以前もかわかみさんにしてもらってよかったから」
と言っていただける。
明治から続いている会社としての歴史、140年もの期間ずっとお客様に安心を提供してきたからこそのことだとお思います。
そんな中にいて、自分はなにができているのだろうかとプレッシャーを感じたのだと思います。
そんな中で、今携わらせていただけているということ。
故人様の最後の節目に携わらせていただけているということ。
小さなことも一つひとつが故人様やご遺族の為になっているということ。
たった一つたりとも気を抜いてはいけないこと。
そんな当たり前のことを改めて考えさせていただけました。
ご遺族の非日常に寄り添うということは、確かにプレッシャーも大きいですが、それ以上にやりがいを感じさせていただけます。
こんな未熟な私でも何かできているのではと考えるとうれしくなります。そしてもっともっと何かできるのではと活力が生まれてくるのです。
今回の経験で少しだけ理解できたことは、安心を提供するということは、これという明確な答えがあるのではなく、どれだけ目の前のことをコツコツ対応させていただけるかではないかと。
ただしこれもわかった気にならずに今後もひとつひとつに感謝することを忘れずに、全力で向き合っていけば、また何か気付けるかもしれないと思うのです。
そして、このすべてがご縁で成り立っているのであると感じさせていただけたことに、故人様そして、ご遺族に感謝の気持ちでいっぱいになりました。
今後もいかに安心を提供できるかということを目標にしていこうと決意させていただけました。