家族葬から考える葬儀の意義
事前のご相談や実際にご葬儀の依頼をお受けした時に、「家族葬でお願いします」との言葉は、当たり前のようにお聞きするフレーズになっております。
家族葬といっても故人様の近しいご家族のみがご参列する場合もあれば、ご近所の方を呼ばれ、そこそこのお人数になられるような場合もございます。
家族葬に明確な定義はございませんが、家族や親しい友人、知人を中心とした少人数でのご葬儀のことを言い、おおむね参列者数がはっきりとしているご葬儀のことだといわれております。
どうしてこれだけ家族葬が一般的になったのかを考えますと、親しい方のみでお送りすることにより、ご家族が納得しやすいお別れの形を、たくさんの参列者が来られる一般葬よりも作りやすいということから、広まったとよく言われます。
また生前に、大変だった一般葬を思い出し、子供たちにはあんな苦労はさせたくないわ、というお考えの親御さんの多くが、「私の時には家族葬で、あんたたちだけで見送ってくれたらいいからね」とおっしゃられているようです。
そして私は、近しい身内のみでお別れをされました、ある親子のご葬儀を思い出します。
喪主となられる娘様とお母さまは、生前に弊社へ事前のご相談をされており、どのようにお別れをするかなどをしっかりと話されておりました。
お母様は「祭壇もいらないし、誰も呼ばなくても、〇〇ちゃんが送ってくれたらそれでいいからね」とおっしゃられていました。
お母様は、ご自宅での看取りとなり、そのままご葬儀までの間、いつものようにお母様と娘様は、ずっと一緒に最後の時間を過ごすことができました。
「まだまだ実感はないけど自宅で過ごせてよかった」
このご自宅で、きっと葬儀の日まで、眠られていらっしゃるお母様とたくさんの会話をされたのではないでしょうか。はじめは、ご相談時にお母様もおっしゃられていましたように娘様お一人でお送りされるとのお話でしたが、
「母は私一人で見送ってと言っていたけれども何人か人を読んでも大丈夫ですか?」とのお電話がありました。
私は「もちろん呼ばれても大丈夫です」とお伝えしました。
ご相談の時はお母様のお言葉を優先しようと、娘様も黙られていらっしゃったのでしょうが、この時がきてしまったときに、お母様のいろんなお気持ちが見えてきて、いや見えていたけどなかなか口にだせなかったことを、娘様の思いでされたいことを、意を決して決められたのではないでしょうか?
きっとお一人で見送るのは心細いところもおありだったのかとも思います。
当日に、親交のあった方が数名来られ一緒にお別れをすることになりました。
家族葬といっても、ほんとうにいろいろなカタチがあり、どれが正解でどれが不正解ということは、我々葬儀社のスタッフからしてもいうことはできません。
私は、送られる側の遺志ももちろん尊重せねばなりませんが、送る側が「きちんと送れてよかった」と、いつ思い出してもそう思えるようなカタチになることが一番ではないかと思うのです。
それが葬儀の意義のように思うのです。
だからこそ、我々はいろんな可能性をお客様に、ご相談の時からお伝えしていかなければならないのだと。
「家族葬で」というご要望が多い中だからこそ、本当に望まれているご葬儀のカタチを、きちんとお伝えしなければと強く思うご葬儀でした。