「いまどき自宅でお葬式ってできますか?」
「もちろんでございます、一度ご自宅を拝見させていただいてもよろしいでしょうか?」
お客様からご逝去の電話を受けた最初のやり取りでした。
最近では正直珍しくなってきたご自宅でのご葬儀のご相談。他府県ではまだまだされることも多いのかもしれませんが、大阪市内や堺市内では見かけることが少なくなってきました。
その後、すぐにご自宅へ伺いお話しさせていただいたところ、足を悪くされたお母さまがいらっしゃり、近くても離れた式場でのお葬式になると参列ができなくなるので、できれば自宅でしたいとの事でした。
実は今だから言えるのですが、このお家でとなると少し厳しいかもしれないなというのが初めの印象でした。場合によっては、お母さまのご移動に関しても含めて、いろいろとご提案してみようと考えていました。
というのは、ご自宅でのお葬式の場合、お棺が通るのかどうか、玄関口に霊柩車が着けられるスペースがあるかどうか、お寺様を呼べるスペースがあるかどうかなどを考えなければいけません。
今回のケースではお寺様を呼んで、皆様に座っていただくスペースを作るのが難しいかもしれない、と感じていたのです。
決してお部屋が狭いとかではなく、やはり時代の流れとともに家の造りも変わってきましたし、ご近所さんのお部屋を借りることも難しくなっています。
ですが、お母さまのご事情をお聞きして、そんな考えは吹き飛び
あまり考えずに口から出てしまいました。
「まずはスペースの確保ですね」
と片付けから始め、タンスや家具などの移動をお家の方と一緒にし、なんとかスペースを確保することができました。次にお母さまの動線も考え、少し隙間をおあけするように祭壇を配置し、なんとか無事に、ご希望のご自宅でお葬式を執り行うことができました。
お母さまも参列することができ、最後にはいろいろと「希望きいていただきありがとうございました」とのお言葉もいただくことができました。その時の表情は今でもはっきりと覚えています。
お葬式のカタチ、スタイル、想いは、それぞれなのだと、頭ではわかっていてもどうしてもこうだろう、こうあるべきだ、と凝り固まり、決めつけてしまっているということの怖さを改めて勉強させていただきました。
勿論、全くもって無理なことを「できます」と言ってはいけません。しかし、何の試みもする前から「できない」と決めつけていることはなかっただろうか?と考えさせられました。
この仕事させていただいている以上は忘れてはいけない大切なこと、それを再確認させていただいたように思うのです。
お客様の想いをしっかりとお聞きすること、そしてそれをできる限り叶えて差し上げる。
それこそ葬儀に携わる者として、自分自身の最大の目標です。
「直葬でいいです」
「故人は質素でと言っていたので何もいりません」
最近はご相談やお打合せの際、まず一言目にそうおっしゃられることがあります。
ただ言葉の額面通りに捉えて、「それがお望みならこのプランで」「うちはこういうプランで行っています」のようなことになるのは、提案させていただく側としては一番よくないのではないか、と思うのです。
お悲しみの中で、しかも大変な段取り、場合によっては何日も付きっ切りで看病していて寝ていらっしゃらないご遺族もいらっしゃいますので、さっさと決めたい、という気持ちになられておられることも十分に察することができます。
しかし、お打合せの合間に、ちょっとだけ故人様のことをお聞きすると、本当はこうしたい、これだけは最後にと思っていた、これができたら喜ぶかな、と思いを吐き出してくださることがございます。
全ての思いができるかできないかは、二の次で、叶えるきっかけをみつけるのも、完全に封印してしまうのも、実は私たち葬儀社の対応ひとつなのではないか、とそんな緊張感を持つのです。
どんなケースでも故人様やご遺族の想いを、できる限り叶えられるように日々努力しなくてはと思い返させてくれた、そんなすばらしいご縁をいただきました。