現実との葛藤…創業明治10年 大阪市・堺市の老舗葬儀社かわかみ葬祭(生野区・東住吉区・天王寺区・阿倍野区・平野区・北区・福島区・都島区・堺市北区)
先日、ある大学病院がコロナに罹患され死期が迫った患者様とご家族が空いた病室を使い、最後の時間を過ごす新たな取り組みを始めた、というニュースを目にしました。
実際に最後の面会をされた方が、手袋を通してだったけど、しっかりと手を握り「ありがとう」と伝える事ができて本当によかった、とインタビューに答えている姿が印象的でした。
このニュースを見て、私は1年半前、匿名で当社に相談の電話を下さった方のこと、その時の対応のことを考えました。
相談者と同居されていたお母様、お二人ともがコロナに罹患され、ご自身は幸い重症化せずホテルでの療養となったのですが、一緒に罹患されたお母様は重症化してしまい、病院に搬送されたとのことでした。
お母様との面会も許されず、ご自身はホテルに隔離され、病院からの連絡を待つことしかできない状況で不安だけが募り、お母様は完治すると信じる一方でコロナに感染して亡くなってしまった場合どうなるのかと、当社以外の葬儀社にも電話でご相談されたそうです。
どの葬儀社からも、コロナに感染してお亡くなりになった場合、ご遺体に触れることはおろか、お顔を見て、最後のお別れも許されず、死亡後すぐに納体袋に収められ、滅菌消毒後、棺に納められること。
防護服を着たスタッフが他の利用者のいない夕方に火葬場にご遺体をお連れし荼毘に伏されること。
その際、ご遺族は立ち会うことはできず、お骨になってご帰宅されることなどの説明を受けたそうです。
報道などである程度の事は知っていたそうですが、数社の葬儀社から現実を聞かされ更に不安が募り、何とかできないかと、当社に電話を下さったそうです。
その方は、「せめて納体袋に納める前に顔を見たい。できれば死に化粧くらいしてあげたい」「お別れもできないなんて、あんまりです・・・」と,おっしゃいました。
今でこそガラス越しの面会が許されたり、透明の納体袋に納められたご遺体と対面したりできる病院が増えつつあり、我が社でもできる限りの対応をすすめております。
しかし、その当時はコロナウイルスという未知の存在の前では面会できないということが当たり前で私も他の葬儀社と同じような説明しかして差し上げることができませんでした。
「私は既にコロナに感染したので免疫はできているので面会しても大丈夫なはずです。誰にも迷惑はかけないので、私が死に化粧をさせてください」
「万が一、私がまたコロナに感染しても私が責任をとります」と、ご納得いただけず、電話の声がだんだん泣き声に変わってゆくのがわかりました。
悲痛な思いは伝わってくるものの、「行政からの指導で、面会はできないことになっています」「新型コロナウイルスは解明されていない事が多く、安全の為にどうしても慎重に対応せざるを得ないのです」
としか返答することができませんでした。
「ご無理言って申し訳ありません」と電話は切れてしまいました。
面会がかなわないことは、おそらくその方もご理解はされていたかと思います。
それでも、何とかしてほしいと当社に電話を下さったのに、お力になれなかった事を申し訳ないと思うと同時に、コロナに感染してお亡くなりになるという事は、髪を整え、化粧を施すなどの身支度をして、家族で見送る、という当たり前の事が出来ない、それがご家族にとってどれほど辛いことなのかを実感した出来事でした。
その後、お母様がどうなさっているのか、結局わからないままです。
先述の大学病院では、「最後だけでも患者様とご家族を合わせてあげたい」とスタッフの方から声が上がったそうです。ただでさえ逼迫している医療現場で、最後まで患者様に寄り添うスタッフの方々の取り組みは尊敬の念に堪えません。
今もなお1日何十人という方がコロナでお亡くなりになっています。その方々は誰かの大切な人であり、辛い思いをされている方がたくさんいらっしゃいます。
私たち葬儀社も、少しでもその方々のお役に立てる様、新しい葬儀の形を模索しなければならない、今度こそ何かしらの支えになれる葬儀社でありたい、そのニュースをみて、そういう強い思いがこみ上げてくるのでした。