白いお花で
当社家族葬ホールの「家族葬おくりみ勝山」に、ご葬儀の事前相談にお越しくださった女性。
2ヶ月ほど前に、ご主人が日課であるプールに向かわれる道中で交通事故にあわれ、救急車で運ばれたそう。それ以来、一度も意識は戻っておらず、今後回復することは期待できないと医師からつらい宣告をされたとお話しくださいました。
心もとないなか、それでもいざというとき慌てないように、後悔のないようにと、ご相談にお越しくださいました。
奥様のご希望はいくつかあるなか、一番のご希望は、白いお花だけで、寂しくならないような祭壇にして欲しいということ。
お子様がいらっしゃらないということもあり、ご親族は多くはなく、葬儀に参列する人数は限られているけれど、それでも、これまで職人として真面目に仕事をしてこられたご主人のために、できる限りのことをしてあげたい、それが奥様の思いでした。
そのご相談から、わずか2ヶ月。
残念ながら、あっという間にその時がやってきました。
回復することは難しい状況とはいえ、お医者様からは1年くらいは大丈夫だろうと言われていたそうですが、急変し、あっという間に逝ってしまわれて、奥様は悲しみが深く、動揺されていました。
そんななかでのご葬儀のお打ち合わせ。
事前相談のなかで、奥様のご希望やお願いするお寺様もすでにお伺いしていたので、その内容を今一度確認しながら、お話をすすめていきます。
一番のご希望であった、白いお花のみでお作りする祭壇。
「白いお花だけで作った祭壇」といっても様々なデザインの祭壇があります。実際の写真を見ていただきながら、イメージに合うものを探っていきます。洋花で柔らかいアーチを描くような祭壇ではなく、伝統的な菊を中心とした綺麗なラインが特徴の祭壇でもなく、胡蝶蘭をメインとした、清楚で品のあるイメージの祭壇に決まりました。
そして、通夜の日。
奥様から、朝早くのお電話。
祭壇のお花が寂しいかも・・・とご不安のお声。
あれだけ祭壇にこだわっていた奥様のこのご心配は一大事。
すぐにお話を伺いにお家に駆け付けました。
ひととおりお話をお聞きして、カサブランカや胡蝶蘭をたくさん使ったデザインの供花を足すご提案もさせていただきましたが、今ひとつしっくりこないご様子。
一旦は祭壇を製作し、実際にご覧いただくことに。
実際に飾った祭壇の写真を撮って、今一度お家へ。
いやあ、ええ祭壇やわあ。寂しない、十分十分。
と、おっしゃってくださいました。
通夜の少し前、式場にお越しいただいて、今一度、
綺麗な祭壇やわ。品がある感じでええわあ、と安心したお声を聞けて、こちらもほっとひと安心。
通夜には、仲良くされているご近所さんやお友達が大勢お参りに来てくださり、それぞれに奥様に励ましの言葉をかけ寄り添っていらっしゃいました。
翌日のご葬儀もたくさんの方の参列。祭壇の白いお花すべてをお棺に納めていただきました。
事故のその日まで、毎日プールに通われていたくらい元気で健康だったご主人。仲間と麻雀を楽しみ、時には夫婦仲良くホテルのビュッフェランチに出かけ、まだまだこの先も変わらない日常があったはず。
ご葬儀を終えて、ご自宅に段飾りの準備に伺ったときには、奥様も放心状態といったご様子でした。それでも、ご葬儀を担当させていただいた私に、
「お世話になったねえ、あんたに頼んでよかったわ、ありがとう」
と、これ以上ないくらい有難いお言葉を頂戴しました。
お一方、お一方、ご葬儀のなかで大切にされていること、叶えたいご希望は違います。
この奥様は、祭壇。そしてそれがご主人のこれまでの頑張りであり、奥様からの感謝の思いだったのだと思います。だからこそ、決して見劣りすることのないよう、でも華美でなく凛とした雰囲気をまとったものであったのだと思います。
どんな時も、どなた様のご葬儀でも、皆様の声にならない思いをカタチにできるよう、これからも精一杯、務めてまいります。
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