直葬ではない
家族葬と同じように、「直葬でお願いします」というフレーズが少しずつ増えてきているように感じています。
直葬とは、基本的にお通夜や告別式のような儀式を執り行わず、火葬のみ執り行う葬送のカタチです。
直葬の場合、家族や親戚などごくわずかなお身内様に集まっていただき火葬を執り行うことが一般的です。
儀式はないと申し上げましたが、ご希望によりお寺様に火葬炉前にてお勤めをいただくこともできます。
直葬というと寂しいけど、現実的にお付き合いのあるお寺もなく、通夜や葬儀を執り行うのも何かしっくりこない、と思われているがこのスタイルをご選択されるケースも散見されます。つまり「どのように見送ってあげたらいいのだろう」と悩まれているわけです。
「お医者さんにそろそろご準備をと言われて来たのだけど、どうしてあげたらいいかわからない」これが話し始めの言葉でした。
ひとつひとつお話を伺っていく中で、「お寺さんって呼ばなくていいの?」「ぎりぎりまで家で一緒にいれるの?」などいろいろとご質問がでてきて、少しずつお答えしながら、どういうことができるのかが、ぼんやりとですがカタチになりつつあるようでした。
その後、ご相談されていたお母様がお亡くなりになられ、お打合わせをさせていただいたときに、
「お母さんっておしゃれやったから、お気に入りの服きせてあげたいわ」と…。
ご葬儀当日、ご自宅でお湯灌をさせていただき、娘様がお母様のお体を拭かれながら「こんなに細くなってたんやなぁ」「いままでありがとうなぁ」と涙を流されながら丁寧に拭いて差し上げていらっしゃいました。
お湯灌後は、お気に入りの綺麗なお洋服をお召しになり、そしてお化粧も施し、いつもいっしょに過ごしてきた普段のお母様になられ、このときには、娘様は微笑んでいらっしいました。
お時間にすると1時間半ほど、この時間のなかで娘様の複雑な感情が本当に滝のように流れ出たように私には見えました。
そしてこのお姿こそ、葬送の一つのカタチだと。
最後に「お湯灌してよかった。はじめはお通夜や葬儀せずに直葬にして後悔しないかと自分で決めておいてとても心配していたのだけど、しっかりとお別れできて私たちらしい送り方になったかな」とおっしゃられていました。
故人様をお見送りする方法は色々あります。このお見送りが一番いい方法だというものはそれぞれのご家庭で違って当然です。
昔に比べると直葬を選択する遺族の方は多くなっていると思います。費用面などからご選択される方もいらっしゃいますが、どうしたらよいかわからないから「儀式的なものがない」葬送のカタチを選択される方は今後、一層増えてくるのではないかと思います。
そうです、お葬式はこうでなくてはならない、なんてことはないのです。
仏式に意義を感じられればその形で、お別れの会のようにされたい方、今回のようにお湯灌やお着替えで故人様らしさを最大限に出すことで意義ある葬送のカタチにされた方、様々なカタチがあって当たり前です。
つまり、これからの時代、直葬とか家族葬とかということではなく、火葬までの時間をいかに過ごしていくか、をいっしょに考えていく時代になったのだと強く思いました。
どんなかたにも「こういうカタチでやって本当によかった」とおっしゃっていただけることが、これからの葬儀社に求められていることなんだと。