ご葬儀の最近の傾向としては、もっぱら家族葬が主流。もちろん一口に家族葬といってもいろんな規模があり、ごく少人数の密葬から呼びたい方をたくさん呼んで行う家族葬、お通夜は執り行わず、ご葬儀の時だけ親戚縁者が集まる一日葬、呼び方の違いだけでしょうが、儀式の執り行い方や参列される方の顔ぶれも変化してきているようです。
よく「昔はお葬式といえば近所が助け合ってやったもんだけどね」「家の周りに白黒の幕がザーッと張られて、たくさんの人が集まって」「近所の子供たちはみんなお葬式になるとお菓子をもらいに集まったりしてたものだけど」
なんて話を聞くこともあります。
ご自宅で家族や親戚に看取られ、お寺様のお経の中、亡くなられる・・・という光景は、
今はなかなか見られないことでしょう。
そのままご自宅で、たくさんの方が集まり、ご近所さんは「手伝うから何でも言って、大変な時なんだから」と声を掛け合う姿も見られなくなってきています。
それはそもそもご自宅で亡くなるよりも病院で亡くなられるケースが多いこともそうですし、故人様がご自宅に帰られずそのまま葬儀場へ行くということも多くなっています。
そうなれば、ご自宅でご葬儀ということも必然的に少なくなるわけです。
以前はたくさんの参列者があったとしても自宅で葬儀ができたのも、やはり近所の助けがあったということは紛れもない事実です。
ご葬儀は祭壇が組めるお部屋があればいいということではありません。
たくさんの駆けつけた親戚が座るスペース、その親戚へ食事を振る舞うスペース、準備する台所、休憩室やお寺様が使われるお部屋、などなど。
当然、お家の規模によっては無理な場合もありますが、そこが昔のいいところ。隣近所さんがお部屋を貸してくれたり、水場を貸してくれたり、お寺さんの控室に使わせてくれたり。
そういうことができたからこそ、たくさんの親戚や地域の方が来られても力合わせて対応できたのでしょう。
住宅事情から、そういった自宅葬が難しくなっても、その代わりに地域の集会所や会館がその代りを果たし、そこが葬儀の主流となった時代もあるわけです。
時代の変遷とともに、特に都市部で隣近所さんとの付き合いも希薄になってきたり、また逆にたくさんの方が係ることに抵抗を感じたりと、地域の関係性が変わればご葬儀のみならず、冠婚葬祭といったものは変化をしていかざるを得ないわけです。
では、家族葬が主流の現在において、自宅葬はできないのかといえば実はそうでもありません。
まず、呼ばれる親戚も限定されてきています。「遠方のおばちゃん夫婦は、年もいってきて大変やから呼ばないでおこう」「無理して来てもらっても泊るところもないし、落ち着いたら報告しよう」
このように人数は少人数、近所さんは少し気心知れた方が数名、となるとちょっとした形で今の時代だからこそ自宅でのご葬儀は十分可能なのです。
先日も地域に長年住まわれている方ではありましたが、自宅で葬式をしたい、突然の事だったし自宅から送り出してあげたいという喪主様からの強い希望でご自宅へ伺いました。
聞けば、身内は5名。突然の事でもあるし親戚連中には連絡もしない、町会さんにも内々で済ませたいとの意向を伝えていると。
そこまで言われれば、家の中を拝見。ご遺族は5名。祭壇のスペース、お柩、テーブル類も充分おける。お寺様の控室も、寝室を一室使える。お柩も出棺に問題はない。
「できますよ、いや是非やってみましょう」
ご葬儀後には、「無理かもしれないと思っていたのに何とかしてくれて、故人はもとより遺族一同本当に感謝している」とのお言葉。
勿論、このご家族が自宅でご葬儀が出来たのには、条件が揃っていたということが一番です。
ただ現在、多くの葬儀社は自社の葬儀ホールをもち、病院からそのホールへ行き、そのままご葬儀へと。
そういったご葬儀が、ご遺族の希望であればなんら問題はありません。
お葬式はもちろん大変ですから、余計な気を使わずに済ませたい方もたくさんいらっしゃるでしょう。
好奇の目にさらされるわけではありませんが、ご近所の手前ご自宅に帰られることも諦められる方もいらっしゃいます。
ご近所さんに知られたら「たいへんなことになる」と。
でも、一度考えてみても良いのではないでしょうか?
今の時代だからこそ、自宅葬という選択肢も。
マンションの部屋で自宅葬をされた方もいらっしゃれば、大通に面した街中のご自宅で葬儀をされた方、そして先ほどのように地域に長年住まわれていらっしゃる方でも、今の時代だからこその自宅葬も叶ったのかもしれません。
やはり、長年住んでいたところから最後も出発させてあげたい、ということを望まれる方もたくさんいらっしゃるのではないか?それに対してのご提案ももっとできるのではないか?
物理的な要因ではなくとも、自宅葬が無理なご遺族もいらっしゃいます。
ですから必ずしも自宅葬が良いということではなく一つの選択肢としてです。
本当に人数を抑えて人は呼ばないとお考えで、条件が揃いそうなら一考の余地はあるように思います。
自宅で見送れたことに大変満足されたご遺族の表情を見ますと、そんなことを強く思うのでした。