葬儀社のお仕事
「お葬式をするのは初めてで… 何からすれば良いのか全然分かりません」
多くの方が絶対に通る問題だと思います。
ご安心くださいませ、葬儀社に任せていただければ全て滞りなく進行させて頂きます。
と、言いつつも葬儀社が何を何処までやってくれるのか。
さらにはご家庭の様々な事情もありますのでどこまで葬儀社に任せていいのか。
「何が葬儀社の仕事なのか」という線引きは難しいものであります。
葬儀社によって、はたまた担当する人間によって違いが出る事は否めません。
以前ご担当させて頂いたお家では、お母様がお亡くなりに、お父様は高齢でいらっしゃいましたので娘様方、三人姉妹が中心になってのお打ち合わせとなりました。
その際、分からないことだらけで、という事で色々とご希望をお聞きしながら詳細を決めていきました。
式が滞りなく終わり、「分かりやすく説明してくれて、思った通りの、思った以上の式になりました、ありがとうございました」と感謝のお言葉を頂戴しました。さらには
「一番感激したのはお通夜の時、父のビールを買いに行ってくれたことでした」とも。
「それそれ!」「あれ、ほんとに嬉しかった~」と3姉妹で非常に喜んで下さっていました。
おそらくご家族様は「買い出しに行ってくれた」というよりも「そこまでしてくれるんだ」という所に感動を覚えていただけたのではないかと思います。
多分、買い出しに代わりに行くことは葬儀社の仕事ではないでしょう。しかし、「ご家族に満足していただける葬儀」を提供するのは葬儀社の務めです。
だとすれば葬儀社の仕事とは一体何処から何処までなのだろう…
と、自分でも分からなくなりそうなので今一度考えてみることにします。
私の父が亡くなった時、深夜の事です。私も業界に携わる以前の事でしたので家族揃っておろおろしていました。そんな中病院で紹介された葬儀社を待っている時。
父方の親戚が厳しい方が多く、「病院の治療が悪い」「葬儀社の対応が遅い」と
挙句の果てに母への文句も聞こえてきました。
悲しみの中、葬儀や今後への不安、そして親戚からの圧で母は憔悴していました。
そんな時父の友人の一人、おそらく一番仲が良かった方が病院まで駆けつけてくれました。
ウチの状況や親戚の事もよくご存じの方で、なにかあったらアイツを頼れ、と父からも言われていた方で私が連絡をしました。
父への挨拶をされ、お迎えの車が来る時間を尋ねた後
「すいません、こんな夜中に…どうしていいか、分からなくて…」
と、言った私に
「うん、後の事は任せろ。お前達はお母さんの傍にいてやりなさい」と言われました。
とても心強く、安心したからでしょう。その時一番泣いたと思います。
後は、「自宅の前に車が出入りするから、近所に挨拶に行ってこい」「親戚が家に来るから食べ物と飲み物を買っておけ」とアドバイスをくださり。
「お前と兄貴で動け、親戚に文句言われる前にやってお母さんを安心させろ」など、
非常に頼りになったのを覚えています。
全て終わった後は親戚の方も「君らもしっかりしてきた、どうなるかと思ったけど大丈夫やね」と言ってもらう事が出来ました。
300人くらい参列する葬儀でしたので葬儀社の方にも大変お世話になったと思いますが、一番記憶に残っているのは事情を知って寄り添ってくれた「父の親友のおっちゃん」でした。
お通夜の際、父の名前を叫びながら号泣して泥酔していましたが。
「親戚の手前、自分達で動け」という言葉は葬儀社として非常に難しい提案、なのですが
以前、ご自宅でお亡くなりになられた方にお体の処置と、供養していただく「枕飾り」をしに行った際、興味津々のお孫さんと一緒に飾りを準備しました。
準備も終わり、ご説明した後に「ごめんなさいね、ありがとう」とおっしゃった故人様の奥様に「お孫さんが手伝って下さりました、こちらこそありがとうございます」
と伝えたときに非常に嬉しそうにしていたのを覚えています。
葬儀社の仕事が何処から何処まで、という線引きはやはり難しく、考え続ける日々ではあります。
故人様やご遺族に寄り添ってどこまでも出来る事が有るのか。
仕事として携わるのはもちろん、ご遺族にとって大事な、大切な時間を共有する一人の人間としても。
自分に出来ることを全力で遂げられるよう、日夜奮闘していこうと思います。