私が担当させていただいた葬儀のお話です。
その日の夕方、私は年末に向けて倉庫で備品の在庫チェックをしていました。
突然、携帯がピリリ!!ピリリ!!けたたましく鳴り慌てて電話をとりました。
それは事務所からの電話で、
「ご逝去の知らせがありました。故人様は自宅で亡くなられたそうです」
『わかりました。すぐに事務所に戻ります』
事務所へ戻り業務から話の内容を聞くと、ご逝去されたのは奥様で連絡者はご主人様とのこと。
私は準備をして車で故人様の自宅へと向かいました。
到着しインターフォンを押すと50代の男性が出てこられ、その後ろに小学5年生くらいの男の子が立っていました。
部屋へ上がらせていただき故人様にドライアイスの処置を行い、ご遺族様に枕飾りの説明をさせていただき、隣の部屋で喪主様と葬儀の打ち合わせをしていました。
すると私の背後を誰かが通りすぎていく気配を感じました。
向かいに座っている喪主様の目線を追いかけてみると、男の子がお母さんの枕もとに座り手を合わせているのです。
喪主のお父様は目を真っ赤にして耐えておられました。
翌日、私はご納棺のために自宅へ伺いました。
部屋の間取り上、故人の着替えは部屋で行い納棺を玄関で行うことになり、すぐさま準備にとりかかりました。
ご遺族様にお集まりいただき、皆さまの前で粛々と納棺の儀を始めていきました。
しかし部屋には男の子の姿はありません。
着替えが終わり、喪主様、私、当社スタッフの3人で故人様を抱いて玄関に準備しているお棺までお連れすることになり、3人で息を合わして故人を抱きあげました。
すると私の横に男の子が割り込んできて、精一杯の力で顔を真っ赤にしながら、お母さんを抱き上げているのです。男4人力を合わせて故人様をお棺までお連れしました。
しかし間取りが悪いため常に無理な姿勢で故人様を抱えていたので大人3人と子供1人は疲労困配でヘタリこんでしまいました。
そのとき男の子がポツリと言葉を発したのです。
「お母さんの顔、笑っているみたい」
私も故人様のお顔を拝顔すると本当に笑っておられるようでした。
大人3人と子供1人が「 般若 」のような顔をして抱いているのですから、きっと故人様も笑いが止まらなかったのでしょう。
合掌