ご葬儀の打ち合わせの際、どんなご葬儀にしたいか、どこでするのか、何をして差し上げて、何を着せてあげるのかなど、細かいことを決めていかなければなりません。
近しい人の死を受け入れられず動揺されているなかですが、打合わせを進めなければなりません。
そんな精神状態であっても、ご葬儀の段取りなどを決めていくには、当然ながら費用の話をせざるを得ないわけです。
中には「いくらかかってもいいからやってあげたいことを全部してほしい」という方もいらっしゃいますが、すべての方がその想いはあってもできないこともたくさんあります。
私も先ずご遺族がどうしてあげたいのかしっかりお聞きし、後悔のないようにと様々な提案を務めて行いますが、費用的に「それはいらない」と、おっしゃられるとそれ以上お勧めするのは難しくなります。またご負担をかけないカタチでのご提案をしても、ご遺族もお疲れの中ですので仕方がありませんが、すーっと聞き流されることもございます。
現場でこんなことがありました。
その時のお客様は、納棺も済まされ、式場の飾りも終わりみなさま一息ついたころ、ボーっとお柩を少し不安そうな顔で眺めてらっしゃいました。
「どうかされましたか?」とお声をかけますと、
「打ち合わせの時は、お化粧はいらないと思ってそう言ったけど、やっぱりしてあげた方がよかったかなぁ」と、ぽつりとおっしゃられました。
「今からでも充分間に合います。是非お化粧してさしあげましょう」とお話しし、
お孫様が持っていらっしゃった化粧道具を使い、皆様の手でお化粧をしていただきました。
「きれいになったわ、ありがとう!」
あの時の喪主様のご不安な表情は、そういうことだったのかと理解し、ご不安が取り除かれた様子をみて安堵しました。