「直葬の可能性」…大阪市生野区の老舗葬儀社 かわかみ葬祭スタッフの現場ドキュメント
近年、我々でも施行する機会が増えてきた直葬。
一般的に直葬とは「通夜や告別式を行わず遺体を直接火葬場にお連れし、火葬するお葬式」と言われており、金銭的理由や寺院離れ等様々な理由・事情により選択される遺族が増えています。
そんな中先日私が担当した直葬の現場で『直葬』に対する意識や考え方を変え、その可能性を感じた出来事がありました。
その遺族様はお母様を亡くされ、金銭的理由というよりは参列される方がご姉弟の3名のみだったことと、コロナウィルスの対策もあり以前のお父様のご葬儀とは異なる直葬を選ばれました。
ご葬送当日、安置所にてご希望された湯灌が始まりました。シャワーの後、湯灌士の補助の元お母様のお体を綺麗に拭き、お着せ替えをし、お化粧をされました。
お母様が生前よくお召しになられていたお洋服はもちろんご愛用されていた化粧品・マニキュア、お気に入りのよく着けていたイヤリングや指輪などのアクセサリーを持参されご姉弟それぞれの手で着けておられました。
特に喪主の長女様はお母様の最期に立ち会えなかったこともあり、せめて最後はご自身の手で綺麗にしてあげたいという強い思いがあったようです。
湯灌後、安置所を出棺し火葬場に向かう道中、渋滞により急きょ道順を変更した際に突然後部座席にて声をあげられました。私が車を停車させ振り返ると涙を流されていました。
ご事情を伺うと変更した道沿いにはご両親が若い頃勤務されお二人の出会いのきっかけとなった会社がありました。そして会社を後にした更にその先には昔長女様がお母様と大喧嘩した交差点があり、私たちは計らずもお母様とお父様、そして長女様の思い出の地を巡っていたのです。
ただの偶然ではなく今は亡きいたずら好きなお父様のいたずら?という冗談も挟まれましたが、思い出の地の巡礼ができたことに対して大変感激され、自分たちの手でお母様を綺麗にできたことと併せて涙ながらに感謝のお言葉を何度も何度も頂きました。
遺族にとって祭壇があること、寺院様のご読経を賜ることが必ずしも『お別れ』ではなく、してあげたいこと等の思いや考えを実行できることも『お別れ』になり、その遺族にとってはそれが最良のお別れになる可能性があることを学びました。
そして今後直葬を選択される遺族がしてあげたかったことを実現できる。心の底から、最良のお別れができる。そんな葬儀社で有りたいと思った出来事でした。