価値
当然ではありますが、お客様からお葬式の費用を尋ねられる事が多々あります。
一言で答えようとすると、20万円から200万円くらいです、など何一つ役に立たない返答になってしまいますので、規模やスタイル、ご希望、予算をお聞きしながらご相談にお答えさせて頂くのですが、どこに費用を掛けるのか、つまり何にどんな価値を見出すのかは本当に千差万別です。
私の妻はターミナルケアの施設で働いているのですが、その中には身寄りのない方もいらっしゃいます。
そういった方が亡くなられた際に、「知らない人よりも、知っている人の手で送ってあげて欲しい」との事で施設からご依頼をいただく事があります。
先日、妻の施設からご依頼をいただき滞りなく火葬を済ませた日の夜に、当社でまた別の方からのご依頼をいただきました。
夜の遅い時間でしたので病院からご自宅へお連れし、そこで少しだけお話させてもらい詳細は翌日にお打ち合わせを、という流れになりました。
家に帰り、妻に「いま対応してきた方のお葬式だけど、人が結構来るみたい、大きなお葬式になるかも」と、いわゆる一般葬と呼ばれる式になりそうといった話をしました。
妻の施設からの依頼は直葬というシンプルな形でしたので妻が「ウチのは直葬でごめんね」と言いました。
この言葉に強烈な違和感を感じました。
妻の施設からの依頼では火葬場で入場前に少しだけお別れの時間を過ごしてもらう形でしたが、当日火葬場まで以前に入所されていた施設の方が10人程お別れに来られました。
朝の早い時間に短いお別れの為にそれだけの人がお越しになられた、しかも前の施設の方であると。妻の施設でもかわいい物がお好きだった故人様の為にばっちりメイクをしてくれていて、参列の方はとても喜んでおられました。
愛されていたんだなぁ、と。凄いなぁと単純に思いました。
なので、言葉の綾ではあったのでしょうが、「謝ることなんて何も無い。あれは凄いお葬式だった。お手伝い出来て光栄だった」と、そんな話をしました。
またある時、ご家庭の事情で火葬にもご収骨にも参列出来ない。全てお任せしますがお骨だけは直接人の手で届けて欲しい、というご依頼がありました。
ご遺骨を郵送すれば費用的にはかなり抑えられますが直接届けて欲しい、と。
ご依頼通りに進行し、家までご遺骨をお連れさせて頂きご遺族の方にお骨をお抱き頂いた時、感極まった遺族様に大変感謝していただきました。
自分が葬儀社の人間としてご遺族様と直接関わったのは本当にわずかな時間でしたが、ご希望に沿えられて良かった、と改めて思いました。
お金を掛ければ豪華な祭壇や大きな式場はご用意できます。しかし、それだけが「いいお葬式」ではないと思いました。
来てくださる人達、思いの詰まった物、またはそれぞれのご家庭の事情、もちろん費用などの制限がある中で。
何にどんな価値を見出すのか。そしてその限られた中で出来る事は何なのか。
様々なご提案が出来るように日々の業務から学び続け、その価値を最大限高められるような、葬儀社の人間でありたいと思います。
いや私たちは黒子として、その千差万別な価値をきちんと故人、ご遺族に感じていただけるようなサポートをしなければ意味がないのだと痛切に感じている次第です。
皆様と是非、ご機会を頂戴し、お話をさせていただければと思っております。