お寺の本堂でフラダンス
お葬式をイメージするとお寺やお坊さん。線香やローソクといった和の空間や作法をイメージされる方が多いと思います。
日本の宗教儀礼なので当たり前といえばそうですが、最近は一昔前の葬儀概念にとらわれない、故人様らしい「かたちにとらわれない」送り方を考えるご遺族様も少しずつ増えてきました。
今回、ご家族様の希望は「お寺の本堂でフラダンス」でした。
故人様の娘様にお伺いすると、遠方のご親戚様も多く、故人様のご友人も参列されるとのことで駅から徒歩圏内で、娘様のお住まいからも近い式場がご希望でした。
お調べしたところ、駅から近く、お住まいから比較的近い場所にあるお寺の本堂が候補のひとつとして上がりました。早速、お寺へ連絡し事情を説明すると、ご住職から快く利用許可をいただきました。
娘様に亡くなられたお母様の人柄をお伺いすると、フラの講師を30年しており、毎年ハワイへ技術や知識を学びに行かれていたそうで、誰よりもフラを愛しておられたお母様。そんなお母様を慕い生徒さんも多数おられるとのこと。
傍でお母様見ていた娘様。最後はフラダンスで送ってあげたいということがいちばんの願いでした。
お寺とフラダンスという、相反するような組み合わせを考えるにあたり当初はイメージが湧いてきませんでしたが「フラダンス」について調べていくと、Hula“フラ”は「踊り」を意味していて様々なバリエーションがあり、カヒコ「古い」という意味のフラは古典的なものを指し、娯楽のためではなく神や自然への信仰を起源としているということがわかり、
つまり「信仰」という仏教との共通点を見つけたことで、いっきに私の中で点と線がつながっていったのです。
そして、娘様との打ち合わせで3つのテーマが決まりました。
「ハワイをイメージした装飾」「花色は原色を基本にカラフル」「生徒さんが追悼のフラをする」
そのテーマを基に式場は青い幕で装飾し、白い棺を中心に配置し原色のカラフルな花で棺周りを装飾。
実際に砂を敷いて砂浜を作ろうと思いましたが費用の関係上断念し、カラフルな花色を強調するために床一面に白い敷物を敷きました。
また、メモリアルコーナーを設置しお気に入りのフラ衣装や、フラをしている写真を多数展示して式場にはプロジェクターを設置し発表会でのフラを放映し皆様に見ていただけるように準備させていただきました。
途中、娘様より「ハイビスカスを髪飾りにしたい」とご相談があり、花屋さんに調べてもらいましたが時期が早くまだ市場に出ていないので断念し造花のハイビスカスを髪飾りにすることになりました。
故人様はフラの衣装を身にまとい、発表会の写真を参考にメイクを再現しハイビスカスで髪飾りをしてレイを首にかけ、まるでこれからフラを踊りだしそうな雰囲気で微笑んでいます。
皆様が故人様のお姿を見て何度も喜んでおられました。
そして亡くなったという悲しみよりも、故人様への感謝の言葉が口々から溢れていました。
故人様の趣味や人柄を取り入れた葬儀は、故人様への感謝の気持ちを表すことができ、参列された方々にも喜んでいただけたと思います。
私たち葬儀に携わる物として伝統的な送り方もそうですが、既成概念にとらわれない送り方をもっと提案できるように今後も柔軟に考え、ご家族様に合った葬儀を提案していくことが大切だと感じました。
100年前の葬儀と現代の葬儀に違いがあるように100年先の葬儀も違っていると思います。つまり、日々、変化しているということ。
しかし何百年経っても変わらないことがあります。
それは「心を込めて大切な方を丁重に弔う」ということです。その本質を忘れずこれからもご葬儀のご提案をしていくつもりです。