僕のヒーロー
50代の男性がお亡くなりになり、妹様から当社にご連絡をいただきました。
家族葬おくりみの安置室にご安置させていただいた際、付き添ってくださっていたのは、そのご連絡をくださった妹様と、若い男性でした。
ご葬儀のお打ち合わせは、妹様とのお話がほとんどで、若い男性はあまり発言されませんでした。少しずつお話を進めていくなかで、故人様は離婚されており、若い男性は故人様の息子様で、娘様もいらっしゃるとお伺いすることができました。
ご葬儀は、宗教家の方にはお越しいただかずに、ご家族だけでゆっくりとお別れできる時間を設けるかたちに決まりました。
すべてのお打ち合わせが終わり、妹様がご帰宅された後も、しばらくお父様に付き添っていらっしゃった息子様。
ポツリポツリとお父様のことをお話ししてくださいました。
父は、病気を患う前は、歯科医だったんです。
たくさんの患者さんが通ってくださって、歯科医の父を頼ってくださってたんですよ。
歯科医だからか、手先が器用で、父自身も好きだったウルトラマンとかを作って
僕にプレゼントしてくれたりして。
父は、僕にとって憧れでカッコいい人で、本当にヒーローみたいだったんです。
父と離れて暮らすことが決まったとき、僕、本当に “パパっ子”なんで、
離れて暮らすのは嫌だったんです。でも、父に「お前が妹の面倒を見てやってくれ」
って言われて。父にそう言われたから、自分が父の代わりに見てやらないと、と思って。
病気がわかってからも、しんどかったんだろうけど、僕の心配ばっかりしてくれていて。
僕、今年成人式だったんです。父と一緒にお酒も飲みに行ってみたかったなあ。
ご葬儀の打ち合わせのときには、あまり話さなかった息子様。
でも、お父様への思いはつよく、ご自身の気持ち、そして何より自慢のお父様のことを、誰かに聞いて欲しかったんだろうなと感じました。
そして、ご葬儀の日。
お棺に、お好きだった食べ物、思い出の品やお花を納めていただき、お別れのお時間を過ごしていただきます。ご出棺のお時間まで余裕があったので、最後のお時間をもう少しゆっくり過ごしていただきたくて、
「故人様のお好きだった曲とか無いですか?
最後に聞かせてあげたい曲とかございませんか?」とお聞きしたところ、息子様が、
「布袋!布袋寅泰ばっかり聴いてた!
しんみりしてるのなんか似合わへん!良いよね!?」と。
いくつかあった布袋寅泰さんのアルバムから、私がチョイスしたのが、LIVEを収録したアルバムでした。曲を聴きながら息子様が、
「お父さんと布袋寅泰のライブに行ったことある、懐かしいなあ~」と。
たまたま選んだLIVEアルバムでしたが、息子様に、もうひとつ、お父様との想い出を振り返ってもらうことができました。
お打ち合わせのなかで、ご家族の方それぞれの、故人様への想いを100%感じ取ることはなかなか難しいことだと感じています。
ご家族それぞれがたくさん思い出話を挟みながら、にぎやかに進んでいくお打ち合わせもあれば、故人様のことをお尋ねしてもあまりお話ししてもらえなくて、淡々と打ち合わせが進んでいくこともあります。
今回は、息子様がお話ししてくださったのは、打ち合わせが終わったあと、故人様と息子様と私の3人だけになった場面でした。
息子様のお話を伺えたから、お式の進め方や、こんなご提案をしたら喜んでいただけるんじゃないかな、というアイデアが具体的に浮かんできます。それが最終的に布袋さんに至るのです。
今後も、ご家族の思いをお聞きするとともに、この人になら話してみようかなと思っていただけるような人間になれるよう、精進してまいります。