頻繁に葬儀の仕事をしていて時折、忘れてしまうことがあります。
例をあげるならば、自社で施行しているご葬儀ではお客様には細かい目配りや気配りをするのですが、他社が施行しておられるご葬儀はというと、正直そこまで気が回っていない時があります。忙しくなってくると特に…。
最近では公営の火葬場併設の式場を利用する方が増えてきており、場所によってはひとつの建物の中に、ふたつ式場が隣合わせになっているところもあります。
つまり隣の式場でご葬儀をしていて、その隣の式場では式場設営のため、荷物の搬入などを行うときもあるわけです。
その時、特に注意しなければならないことは「騒音」なのです。
隣の式場ではご遺族がお悲しみのなか、粛々とご葬儀が執り行われています。
その厳粛な空間の隣で作業を行う場合、できる限り物音を出さないという最低限のモラルがあります。
なぜなら、葬儀という仕事をさせていただいている以上、そこには尊き命を喪った故人様と悲しみにくれておられるご遺族がいらっしゃるということを、私どもは知っているからです。
だからこそ、ご縁があろうとなかろうと故人様に対し、敬意を払い弔意を表す必要があると考え、物音ひとつ立てないよう配慮する努力を惜しんではならないと思います。
当社にご葬儀をご依頼いただいた方で「なぜ、当社を選んでいただけたのか?」という質問をしたことがあります。
その方は以前、ご友人のご葬儀に参列した際、お手洗いの場所がわからず迷っているところに、たまたま当社のスタッフが丁寧に対応したことを覚えておられ、「とても印象が良かった」ということから、ご依頼に発展したという事でした。
逆に隣の式場は他社のお客様だから関係ないとしてしまうと、お客様も見ておられます。
あそこの葬儀社さんは自分のところだけで、周りには気を使わない会社だとお思いになるであろうし、その葬儀社の本質は簡単に見抜かれることかと思います。
周りの方にも良く思われたいから、という理由で私ども現場のスタッフは周りにも配慮し謙虚でいなければならないのかというと、それもまた違います。
この行動は私達、葬儀スタッフのモラルであると同時に、このことこそが弊社が受け継いできた葬儀のプロとしての伝統の一つでもあるからです。
葬儀の現場には、故人様に最後のお別れを伝えに集まって来られた方がいらっしゃるのです。
その方々の心中は葬儀社だからこそ理解できることもたくさんあるはずです。
そのような中に、他社のお客様、自社のお客様と分け隔てるものが何かあるのでしょうか?
私は、集まられた方の思いに対して、我々葬儀社が分け隔てるものなど存在しないと思います。
だからこそ、同じ空間を共有している葬儀社として、すべての方に配慮する必要があるのです。
このことは葬儀のプロとして必要最低限のマナーであり、根幹となる大切なことと考えています。
この伝統を守り続けていくことも葬儀のプロである私の役目であると思います。