思い出と想い
少し前の話になりますが、当会館にて葬儀を執り行った際に、参列者のなかでエコバッグのお忘れになられた方がいらっしゃいました。
喪主様宅へお伺いした際に、その忘れ物のエコバックをお届けさせていただきました。
喪主様は「誰のものか分からないなあ、たいしたものじゃないので処分しておいて下さい」との事ではありましたが、しばらく預かっておいていただいて連絡がなければそのように、と喪主様との間でなりました。
何気ない事柄かと思われるでしょうが、葬儀社としてはこれまた違った様相になってきます。
お棺に何を入れて差し上げるのか、というのはご遺族にとって本当に色々です。
これは入れてもいいのか?これだけは絶対に入れてあげたい、等々。
そんな中、このカップ麺は絶対に入れてあげたい、というご家族の方がおられました。
「大丈夫ですよ、入れてあげて下さい」「これがお好きだったのですか?」
と何気なくお話しましたが、
「故人が、これを作ろうとしている時に亡くなったので」「是非とも食べてもらいたくて!」
と言われ、もう衝撃です。
現場スタッフ全員で、「それだけは絶対に入れてあげなければ!」と、そのカップ麺はまるで宝物のような、ご遺族にとっても、私たちにとってもかけがえのない存在に変化するのです。
そういう事がよくある仕事ですので、ただのエコバッグも「もしかしたら何か故人とゆかりのあるものである可能性も否定できない、そう簡単には処分できない…」と、考えるようになったという次第です。
思い出の品、想いのこもった物、はたまたエピソード。
端からみたら何気なくとも、その人にとっては何よりの物となります。
そういったお話、私たちは聞かせていただく側になるのですが、
少し違った経験がありましたのでお話してみようと思います。
ある、とても寒い日の事でした。
ご逝去の連絡が入り、ご対応させていただくこととなりましたが、この時の対応が少しいつもとは変わったケースでした。
連絡をくださったのは長男様だったのですが、
「父が大阪で亡くなった、私は遠方にいて大雪のせいですぐにはそちらに行けない。母が家にいるが少し認知がある、満足に動けず今も眠っている」
「家の裏口が開いているのでドライアイスなど安置の対応をお願いできますか?」
と、そんなご連絡でした。
すぐさまご自宅の方に伺い、長男様と電話でやりとりしながらドライアイスでの処置をさせて頂きました。
眠っておられたお母様が目を覚まされたので、ご長男様とのやりとりを説明いたしました。
お母様は、えらいこっちゃ!と驚いておられましたが、
「長男様が来られます。我々もしっかりお力添えします、ご安心ください」
とお伝えし落ち着いてくださりました。
その後、別の者が担当させていただき葬儀が滞りなく終了しました。このとき私は別の担当があり、ご家族様とは会うことはありませんでした。
それから数か月の後、ご長男様から会社へご連絡がありました。
「母が亡くなった」と。
お母様の葬儀は私がご担当させていただき、こちらも滞りなく終了しました。
最後、ご自宅へご説明に伺った際に長男様からお礼の言葉をいただきました。
父の時も今回も、お世話になりました、ありがとうございました、と。
その時に、お父様がお亡くなりになった際、電話先でご対応していたのは私です、とお伝えしました。
「あー!あの時は本当に助かりました!」
と、そんな話の中、お母様とのお話をご家族様にお話しさせていただきました。
「じゃあその時はお母さん、分かっていたんだ」
「母がそんなことを言ったんですね、お母さんらしいわ。母が困らせてしまってスミマセン」
などなど。
自分が対応していたことなどわざわざ伝えなくてもいいかなあと考えていましたが、
お母様の話をご家族に少しでも話せた事、それがお母様らしいと想いを馳せていただけた事。話して良かった、と思いました。
思いは人それぞれあり、言葉にしなければ伝わりにくい物です。
また、物に込められた想いは本人にしか分からない物がたくさんあります。
私は20年以上同じ財布を使っておりまして、さすがにボロボロですので見かねた妻が財布買ってあげようかと言ってくれますが、
これは亡くなった父からもらった物で、これ以上の財布は探しても見つからないんだ、とそんなやりとりをしたこともあります。
思いを形にかえる、様々な方法があります。
一緒に考えさせていただければ、またご希望に添うように実現できましたらば冥利に尽きます。
私共とお話する際には是非是非、他愛なくとも色んなお話をお聞かせくださいませ。
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