「 最期に母親の好きだった歌を唄ってあげたいけど、いいかな? 」
以前、担当させて頂いたご葬儀の事。
この時は、人数が親族6名様のみで、無宗教葬という形式で行いました。
無宗教葬でございますので、お寺様のご読経がございません。
一般的な無宗教葬というと献花をし、献奏の中、お花やお供え物を納めて頂き、
ご出棺といったスタイルが多く、無宗教葬で葬儀をされた方の中には「少し寂しいように
感じる」という風に思われる方もいらっしゃるようです。
しかし、今回は少し違いました。
お通夜の時までは気丈に振る舞われていました故人様の妹様、喪主の長男様が
告別式最後のお別れの時では大号泣され、妹様は
「お姉ちゃん何で死んでしもうたんよ~ なぁ~ なんで~ 」と子供の頃に戻った
みたいにいつまでも故人様の傍で、泣き叫び続けていらっしゃいました。
お花やお供え物を皆様に納めて頂き、いよいよご出棺も間近。
その時です。
突然の喪主様からお母様へ、最期の歌のプレゼントです。
実は、喪主様が若いころは何軒ものスナックを掛け持ちしていた歌手だったそうで、
「最期に母親の好きだった歌を唄ってあげたいけど、いいかな?」と
ご相談頂いておりました。
私も思わず、「 是非、唄って差し上げて下さい! 」 とお答えさせて頂きました。
アカペラで山本譲二さんの「花も嵐も」を涙ながらに、
一部の歌詞をお母様のお名前に替え、熱唱されていました。
周りのご親族も手拍子をされ、フルコーラス唄い終えた後に、お母様のお顔に
手を添えられ、
「 好きやった歌、唄ったよ!聞いてくれたね? 」
と最期のお別れをされ、担当させて頂いた私もとても強く印象に残るご葬儀となりました。
実は宗教家を呼ばない無宗教葬や、通夜・葬儀を行わない直葬を
行われた方で、後悔される方が結構いらっしゃいます。
「やっぱりお寺さんを呼んでお経を上げてもらった方がよかったかな~」
「お通夜も葬儀もなかったからかわいそうだったかな」
今回は一体なにが違ったんでしょうか?
ご遺族とこの時のお話をさせて頂いていても、一人も後悔する人がなく、
満足のいく葬儀が出来ましたと皆さんおっしゃられております。
「最も母親と親密な人達だけで、自分達が思う形で送ってあげたい」
そこにはご遺族の明確な想いがあり、故人様と生前にしっかりと話し合われた事だと
思います。
たくさんの人達を呼んで盛大に送ってあげたい方、少人数でしめやかに送ってあげたい方、
故人様の生前の考えで送ってあげたい方。
送る形は人それぞれです。
考え方も皆さん一人一人違うと思います。
ただそこに明確な考え・想い・話し合いがあるかどうかという事が後悔する、しないの
一つのポイントだと私は思います。
もしもの時、皆様方には是非、自分達の送りたい形で、決して後悔する事のないよう、
満足のいく故人様の人生最期のお別れをして頂ければと心から願います。
その為には、参列人数やどのような形で送りたいのかという想いを生前にじっくり話し合い、
故人様の思いをきちんと理解し尊重する事こそが、重要な事だと私も再認識致しました。