葬儀社の寝台車が故人様を迎えに行く場合、大半の行き先は病院です。
しかし少数の割合で警察署や大阪市の監察医事務所へ出向くこともあります。
故人様が警察署や監察医事務所などに搬送される理由は、自宅などで亡くなられ死因などが不明の場合・事故や事件の可能性が考えられる場合・そして自ら命を絶たれた場合などです。
大阪市専属の監察医が各警察署を巡回し搬送された故人様の検視を行い、その場で死因が特定できれば葬儀社の寝台車が警察署の霊安室へお迎えに向かいます。
その場で死因が特定できない場合は監察医事務所へ搬送し、行政解剖を行い死因を調査します。
解剖が済むと葬儀社の寝台車が迎えにあがり、式場や自宅へお連れするのです。
私が過去に自ら命を絶たれた方の葬儀を担当したとき、ご家族様から警察署員の対応の悪さについて教えていただいたことがありました。
亡くなられた方は女性の方で3年前からうつ病に罹っておられ、家族が寝静まった深夜にマンションの最上階から飛び降りて自殺をされました。
家族の方から、連絡を受け警察署の霊安室へお迎えにあがると、納体袋に覆われた故人様がおられました。
私どもは丁重に故人様を柩に納め、家族の方に故人様のお顔を見ていただき本人確認後、柩を寝台車へお乗せし安置先までお連れしました。
その日の晩家族の方より私に電話があり、「故人の遺留品の中に「ネックレス」がありませでしたか?」と、のこと。
故人様が大切にしておられたネックレスで、警察の方と身元確認をしたときにはすでに無かったということで、もしかと思い自ら命を絶った現場を探したが、何処にも見当たらないということでした。
私も納棺の際に遺留品の確認をしましたが、ネックレスは入っていなかったという旨を伝え、後日、棺の中に納めた遺留品をもう一度確認しましょう。というお話をさせていただき電話を切りました。
翌日、家族の方より連絡があり「ネックレスが見つかりました」という報告をいただきました。
お話によると、マンションの管理人さんが見つけて警察の方のところへ届けたのですが、
警察の方に「そちらで処分しておいて下さい」と言われたそうです。
しかし、管理人さんは勝手に処分できないと思いネックレスを残していたそうで、
翌日、家族の方が諦めきれずにマンションの周囲を探しているところを偶然見かけ、
ネックレスを渡してくれたとのことでした。
電話の向こうで、話しておられる家族様の喜びが手に取るようにわかりました。
そして、もう一つ家族の方は市民を守るための警察の人間味のない対応に
「とてもガッカリ」したということです。
警察の方すべてとは思いませんが、一部の方の心無い対応で家族の方は辛い思いをされたのではないでしょうか。
今後このようなことが二度と起こらないように、切実に思います。