unknownで知る事実
数年前のことです。昔の同僚が亡くなったらしい、という話を人づてに聞きました。
お互いに退職してからは少し疎遠になり、半年に1回ほど、お互いの近況報告をする程度の間柄になっていました。そのため、悲しいというよりは、最初はどこか現実味がなくてびっくりしてしまったのを覚えています。
体調を崩して実家に戻っていたことは聞いていましたが、まさか亡くなっているなんて思いもしませんでした。教えてくれた知人も詳しいことは知らないようで、情報もあやふやなままです。最後に連絡を取り合ってから、気づけば半年近くが経っていました。
事実を確かめようにも、私の手元にあるのは彼女のLINEの連絡先だけでした。
ご実家の住所も分かりません。一緒に働いてはいましたが、私は彼女のプライベートなことを、思いのほか何も知らなかったのだと気づかされました。
「娘が結婚して家を出ていくから寂しいな」と笑いながら話していたこと。
まだお若いお嬢様は、今どんなに悲しまれているだろうかということ。
ご両親もご健在だと聞いていたので、さぞかし深く悲しまれているだろうということ。
「体調を崩しているから、リモートで飲み会をしよう」と誘われていたのに、ついつい先延ばしにしてしまったこと。
いろいろな思い出と一緒に、小さな後悔が頭をよぎりました。
何かの間違いかもしれないと思い、とりあえず彼女のLINEに「お久しぶりです」とメッセージを送ってみましたが既読にはなりませんでした。
私の誕生日の日に、「また歳をとってしまった、嫌だなぁ」とこぼした私に、「私は昔から病気をしていたから、今年も無事に誕生日を迎えることができたと思って毎年嬉しかったよ」と言った彼女の声が、静かに思い出されました。
それからも時折、メッセージを送ってみましたが、やはり既読になることはありませんでした。そうして少しずつ、「ああ、亡くなったのは事実なんだな」と思うようになっていきました。
つい先日、何気なく開いたLINEの画面で、彼女のアカウントが「unknown」に変わっているのを見つけました。
ご家族のどなたかが、解約や削除の手続きをされたのでしょう。
これで、なんのお別れもできないまま、本当にすべての接点がなくなってしまいました。
私は普段、葬儀社の社員として多くの方の葬儀のお手伝いをさせていただいてきました。「人はいつ何があるか分からない」という現実を、仕事を通じてさんざん見てきたはずでした。それなのに、彼女からの誘いを先延ばしにして放置してしまったことを、今、とても後悔しています。お別れの言葉をかける機会もないまま、ある日突然、つながりがぷつりと切れてしまうような現実だけが残りました。
お葬式という儀式は、単なる形式的なものではありません。
残された人間が「その人がいなくなった」という現実を少しずつ受け入れ、心に区切りをつけるために本当に大切な時間なのだと、当事者になって改めてしみじみと感じました。
私自身のこの苦い経験を心に刻み、ご遺族が後悔なく大切な方とお別れができる
よう、これからも葬儀の仕事に精進してまいりたいと思います。
- < 前の記事へ


































