葬儀にかかる費用には、祭壇の設置費用やお布施、香典返しだけでなく、参列者に振る舞う食事代もあります。
これらの費用は決して安いものではありませんから、もしものときに備えて目安を知っておきたいものです。
今回は、葬儀での食事に焦点を当て、食事の種類や必要な費用の概算をお伝えします。
食事代を抑えるコツも取り上げますので、お金の不安を解消し、亡くなったご家族を心安らかに送り出したい方は、ぜひご一読ください。
葬儀における食事
地域差や慣習にもよりますが、一般的に、葬儀で用意する食事は、通夜振る舞いと通夜の翌日の朝食、精進落としの3種類です。
家族・親族を中心とした家族葬においても、特別な要望がない限り、友人や会社関係者なども参列する一般葬と同じようにこれら3種類の食事を振る舞います。
まず、通夜法会後に提供される食事が、通夜振る舞いです。
参列者や僧侶への感謝の気持ちを表すとともに、みんなで故人の思い出を語らいながら、故人と最後の食事を楽しむという意味合いも込められています。
かつては精進料理のようなメニューがマナーとされていたものの、現代ではあまり気にしない風潮になっているため、オードブルやお寿司を大皿で用意するのが一般的です。
飲み物には明確な決まりはありませんが、“清める”という意味を込めてアルコールを用意するとよいとされています。
通夜の翌日の朝食は、通夜への参列後、喪主宅や斎場に宿泊した方に用意する朝ごはんです。
基本的には、家族・親族だけが食べることになるでしょう。
そして、一連の葬送儀礼のなかで最後となる食事が、精進落としです。
火葬から収骨まで参列してくれたお礼を兼ねて、告別式の日に用意されます。
なお、精進落としの本来の意味は、四十九日の忌明けに食べる食事です。
仏教の考えでは、故人が四十九日目に浄土に行けるように、遺族は殺生を避けて肉や魚を食べないのが習わしとなっています。
四十九日の法要を済ませ、精進落としによって肉や魚を解禁することで、日常生活に戻ることを意味していました。
そのため現代においても、精進落としの料理としては、肉や魚を取り入れた和食が基本的に提供されます。
このように、葬儀の際の食事といっても種類があり、それぞれに参列者や故人への意味合いを持っています。
葬儀における食事の流れ
ここまでお読みいただき、「葬儀の際の食事に種類があるのはわかったけど、それぞれ決まった流れがあるのかな」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
葬儀の食事の流れは、通夜振る舞いと精進落としの場合で異なります。
そこでここからは、葬儀におけるそれぞれの食事の流れを見ていきましょう。
なお、通夜の翌日の朝食は一般的な朝ごはんであり、特に決まった流れはないためここでは省略します。
通夜振る舞い
通夜振る舞いは、通夜法会のあとに以下のような流れで行われます。
【一般的な通夜振る舞いの流れ】
1.通夜法会終了前の喪主の挨拶で、通夜振る舞いの用意がある旨を伝える
2.参列者が通夜振る舞いの会場に集まる
3.参列者がそろったら、喪主が開始する旨を挨拶とともに告げる
4.参列者が食事を始めたら、喪主やその配偶者が挨拶回りを行う
5.通夜振る舞い終了の挨拶を行う
まず、通夜法会終了の挨拶とあわせて参列者に通夜振る舞いを案内します。
通夜振る舞いの開始の挨拶では、参加者全員での献杯が行われますが、乾杯とは異なり、グラスを高く掲げたり打ち合わせたりすることはありません。
食事の開始とともに、遺族は挨拶回りを始めます。
この際、故人を偲びつつも参列者一人ひとりに挨拶やお酌をして回る必要があるので、時間配分が大切になってきます。
なお、通夜当日に喪主がすべきことはかなり多いため、遺族や親族のなかから仕切り役を立てておくと、通夜振る舞いをスムーズに進められるでしょう。
開始の挨拶から1~2時間ほど経った頃合いで終了の挨拶を済ませて、通夜振る舞いは終了となります。
大阪では、一般の弔問客に通夜振る舞いをすすめるケースは稀ですので、親族、親戚で故人を偲んでの食事となることが多いです。
精進落とし(仕上げ料理)
続けて、大阪での一般的な精進落とし(仕上げ料理)の流れを紹介します。
事前に知っておくことで、いざというときに焦らずに済むはずです。
【大阪の一般的な精進落とし(仕上げ料理)の流れ】
1.火葬場入場後、式場へ戻るか近隣の料理屋など、会場へ移動する
2.参列者が精進落とし(仕上げ料理)の会場に集まったら、喪主が開式挨拶を行う
3.献杯の挨拶を行い、精進落とし(仕上げ料理)を開始する
4.参列者が食事を始めたら、喪主やその配偶者が挨拶回りを行う
5.精進落とし(仕上げ料理)終了の挨拶を行う
繰り上げ初七日法要とは、初七日の法要を繰り上げて葬儀と同じ日に済ませることを指します。
参列者に何度も集まってもらう手間を省き、遺族の負担を軽減するために、最近では繰り上げ初七日法要を行うのが一般的になっています。
精進落とし(仕上げ料理)の挨拶は、基本的に喪主が行いますが、喪主以外の方でも問題はありません。
挨拶ではまず、参列者や僧侶に対して感謝の気持ちを伝えることが大切です。
また、故人に対して敬意を表す献杯に関しては、喪主が行うか、あるいは指名された別の方が挨拶するケースもあります。
喪主以外の方に頼むのであれば、故人との関係や思い出を簡単に話してもらいましょう。
通夜振る舞いのときと同様に、遺族は各席に行って参列者にお礼を述べます。
開始の挨拶から1時間半程度を目安に終了の挨拶を行い、火葬場へ収骨に向かうのが大阪は一般的な流れになります。
関東や関西、また地域によって、精進落としや繰上げ初七日の行われるタイミングや流れが大きく変わることがありますので、葬儀社に尋ねて確認しておくのがよいでしょう。
葬儀の食事代の相場
ここまでは、葬儀でお出しする食事の種類として通夜振る舞いと精進落とし(仕上げ料理)を紹介したうえで、それぞれの食事の流れをお伝えしました。
葬儀の食事には僧侶もお誘いしますが、参加されない場合もあります。
その際は、おもてなしの代わりとして御膳料(おぜんりょう・正式には粗飯料といいます)をお渡ししましょう。
この御膳料の費用相場は、1人あたり5,000~1万円程度で、僧侶が複数名で来られた場合には、人数分のお金を1つの袋にまとめて包みます。
ただし、御膳料は地域やお寺などによって変わってくるので、この金額は参考程度にお考えください。
さて前置きが長くなってしまいましたが、葬儀の食事には実際どのくらいの費用がかかるのでしょうか。
ここからは、通夜振る舞いと精進落とし(仕上げ料理)の費用相場を紹介していきます。
通夜振る舞いの場合
通夜振る舞いにかかる費用相場は、1人あたり2,000~3,000円程度です。
一般的に、通夜振る舞いでは、オードブルやお寿司などのように1つの器に複数人の料理を盛りつけたかたちで用意します。
アルコールやソフトドリンクなど、飲み物の量が多くなると費用の総額も増えます。
ここで重要なのが大阪では家族・親族、親戚にのみ振る舞う場合であっても、その参列者全員が通夜振る舞いに参加するかどうかがわからない場合の対応です。余らせないために少なめに発注されることもありますが、葬儀社スタッフの経験上、追加で注文されるケースもよくあります。
遅い時間になると、遺族が近所のお店へ買いに走ることなどもありますので、気持ち多めに発注するのがよいでしょう。
関東のように、参列者全ての方に振る舞う場合は、全ての方が参加されないケースもありますので、きっちりと人数分の食事を用意する必要はなく、通夜に参列する人数の2分の1程度を目安に料理を発注するとよいでしょう。
一般参列者に通夜振る舞いをする目的は、お腹を満たすことではなく、故人との生前の思い出などを話し、偲ぶことにあるのです。
ただし、近年では感染症対策の一環で、通夜振る舞いも、大皿ではなく「個食」で注文される方も増えてきております。その場で召し上がられなくても、お持ち帰り用で準備しておけば、お渡ししてお帰りいただくことができます。
精進落とし(仕上げ料理)の場合
精進落とし(仕上げ料理)には、1人あたり3,000~8,000円程度の費用が必要です。
相場を考えると、最低でも1人あたり4,000~5,000円程度の料理を用意したほうが無難といえます。
通夜振る舞いとは異なり、1人ずつ食事を用意する必要があるため、参列者の人数に応じて発注しましょう。
食事のジャンルは基本的に和食で、会席料理が選ばれることが多くなっています。
一般的なメニューは、以下の通りです。
【精進落とし(仕上げ料理)のメニューの例】
・お刺身
・焼き魚
・天ぷら
・野菜と牛肉の煮物
・茶碗蒸し
・白米
・お吸い物
・デザート
お子さまが参列する場合は、子ども向けの食事を別途用意する必要があります。
また、通夜振る舞いと同じく、アルコールやソフトドリンクなどの飲み物代も考慮しなければなりません。
葬儀の食事代を抑えるコツ
ここまでの説明を受けて、「葬儀一式にはお金がかかるので、食事代はできる限り抑えたいな……」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
食事代の負担を減らす簡単な方法としては、食事のグレードを下げることが挙げられます。
しかし、葬儀における食事には“参列者への感謝を込めて振る舞うもの”という意味合いがあるため、内容は弔事の範囲を超えない程度に華やかなものにしなければなりません。
そこでここからは、グレードを落とし過ぎない方法で、葬儀の食事代を抑えるために知っておきたい3つのコツを紹介していきますので、ぜひ参考になさってください。
コツ①精進落としを仕出し弁当に変更する
葬儀の食事代をできるだけ減らしたいなら、精進落としの代わりに、仕出し弁当を参列者に持って帰ってもらうことをおすすめします。
仕出し弁当なら3,000円もあれば、かなり立派なものを用意できますし、アルコールなどの飲み物代も抑えられます。
お弁当を注文する際は、精進落としの代わりである旨を伝え、傷みにくいメニューで作ってもらいましょう。
コツ②精進落としを省略して家族で食事する
家族葬では、参列者が家族・親族といった身内の方のみになります。
そのため、慣習にとらわれずに精進落としを省略して内輪だけの食事会で済ませれば、葬儀の食事代を抑えることができます。
たとえば、故人が好きだったレストランに行ったり、お気に入りの出前を取ったりして、思い出話に花を咲かせるのもよいかもしれません。
なお、精進落としを省略する場合は、参列者に事前に連絡しておきます。
参列者への案内状に、「法要後のお席は設けておりません」とひと言添えておくと、当日慌てずに済みます。
ただし、遠方から参列する親族や、めったに外出しない高齢者に来ていただく場合には、近隣で食事できる場所を用意する、仕出し弁当を手配するなどの配慮をしましょう。
また、精進落としを省略するのであれば、僧侶に対しては御膳料を渡すのが基本です。
御膳料は地域やお寺などによって変わってくるため、金額や御膳料の要不要については事前に確認しておくと安心です。
コツ③相続税控除を利用する
葬儀の食事代を直接減らすことはできませんが、相続税控除について知っておくとお得です。
「葬儀にかかる費用の話なのに、どうして相続税の話が出てくるのか」と思われた方も多いでしょう。
実は、通夜振る舞いや精進落としなどの飲食接待費用は、一般的な金額の範囲内であれば相続税控除の対象になるのです。
そもそも相続税は、故人の財産が家族や親族などの相続人に相続される際に課される税金です。
この相続税は相続した財産すべてに課税されるわけではなく、故人が亡くなった際にかかった費用を差し引いた金額に課されます。
この費用を差し引くことを控除といい、相続税に関する控除を相続税控除というわけです。
葬儀代を控除できれば、そのぶん支払う相続税を節税できます。
相続税法基本通達では、葬式費用として相続財産から控除できる費用を次のとおり定めています。
(葬式費用)
13-4 法第13条第1項の規定により葬式費用として控除する金額は、次に掲げる金額の範囲内のものとする。(昭57直資2-177改正)
(1) 葬式若しくは葬送に際し、又はこれらの前において、埋葬、火葬、納骨又は遺がい若しくは遺骨の回送その他に要した費用(仮葬式と本葬式とを行うものにあっては、その両者の費用)
(2) 葬式に際し、施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用
(3) (1)又は(2)に掲げるもののほか、葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの
(4) 死体の捜索又は死体若しくは遺骨の運搬に要した費用
(引用:国税庁ホームページ 相続税法基本通達)
一般的な葬儀においては、以下の費用を控除することが可能です。
【葬儀に関して相続税控除可能な費用の一例】
・通夜振る舞いや精進落としといった飲食接待費用
・祭壇の設置費用
・棺や位牌、遺影の費用
・花代
・葬儀会場の費用やスタッフの人件費
・遺体の安置と運送費用
このように葬儀に直接関わるものであれば、基本的に相続税控除の対象になるため、税金の負担を減らしつつも、参列者に食事を振る舞うことが叶います。
なお、相続税の申告には期限があり、被相続人(故人)が亡くなってから10か月以内に実施しなければなりません。
相続税の申告には、遺言書の記述にしたがったうえで、戸籍謄本や印鑑証明、銀行関係の書類などが必要になります。
スムーズに手続きを進めるには、葬儀のために支払った費用の領収書も大切に保管しておいてください。
「知っていれば控除できたのに……」とあとで悔やまぬように、相続税控除のあらましについても調べておきましょう。
葬儀の食事は参列者への感謝を込めて振る舞うもの。適切な方法で費用を抑えましょう
今回は、葬儀での食事をテーマに、食事の種類やかかる費用の目安をお伝えしました。
通夜振る舞いには1人あたり2,000~3,000円程度、精進落としには同じく4,000~5,000円程度の費用が必要です。
葬儀の食事代の負担を減らすには、精進落としを仕出し弁当に変更する、または家族で食事をして済ますといった方法があります。
なお、葬儀の食事代は相続税を申告する際に課税対象から除くことができます。
「葬儀費用を抑えたいけど、具体的な方法がわからない」「食事代のことまで考える余裕がない」とお困りの方は、かわかみ葬祭にご相談ください。
大阪で140年にわたって葬儀サービスを提供しており、経験豊富なスタッフが葬儀に関するお悩みを解消いたします。