故人と親交が深かった場合、葬儀の場で弔辞(ちょうじ)を依頼されることがあります。
とはいえ、弔辞を読む機会はそう多いものではありませんので、いざ依頼されると何を伝えるべきか、どう立ち振る舞えばよいのか迷われてしまうかもしれません。
そこで本記事では、弔辞の概要とともに、使いやすい例文やマナーをご紹介します。
心安らかに故人を送り出すためにも、本記事をぜひ参考にしてください。
弔辞とは
弔辞は、葬儀の際に故人に対して、感謝や哀悼の意を伝えるための挨拶です。
“お別れの言葉”や“哀悼の辞”などともいわれます。
弔辞を読む人に明確な決まりはなく、故人と親しかった方や交流の深かった方に対して、遺族から依頼されます。
すべての葬儀で弔辞が読まれるわけではありませんが、団体葬や社葬においては読み上げる時間を設けられるのが一般的です。
一般葬や家族葬など規模の小さい葬儀となると、弔辞を読まないケースもあります。
弔辞に含めたい内容・言葉
弔辞には定型文がありません。
大切なのは、ご自身の素直な気持ちを込めることです。
とはいえ、何を伝えるべきか、どんな言葉を使うべきか悩まれる方もいらっしゃるでしょう。
そんなときは、以下の内容や言葉を盛り込むよう意識してみてください。
故人との関係性
弔辞はご遺族や参列者の方々も聴いているものですので、弔辞を述べる方と故人との関係性は簡潔に伝えておいたほうがよいでしょう。
導入で「〇〇でございます。友人と致しまして、謹んでご逝去を悼み、ご霊前に告別の辞をささげます」と言えば、関係性が端的に伝わります。
とはいえ、弔辞は故人に話しかけるような形式で読まれるのが一般的であり、このように伝えなければならない、と決まっているわけではありません。
「△△さんとは、中学生の頃からの付き合いでした」といったように、聴いている方が自然と故人との関係性を把握できるような言い回しで伝えるケースも多くみられます。
故人への哀悼を示す言葉
弔辞では、故人に対する哀悼の意、つまり悲しみを伝えることが大切です。
“故人のことを思うと、悲しみに胸が痛む”という気持ちを、言葉で表現しましょう。
哀悼の意を表す言葉は、ご自身と同じ悲しみを抱えながら葬儀に出席しているご遺族や参列者の慰めにもなります。
一般的には「△△様の御霊に対し、謹んで哀悼の意をささげます」といった表現が用いられますが、哀悼の意の伝え方は故人との関係性によって異なります。
ご友人であるなら「△△さん、あなたの訃報はあまりにも突然で、いまだに受け止めることができません」と、率直な想いを口にしても問題ありません。
故人とのエピソード
弔辞の主な内容は、故人とのエピソードで構成されます。
故人の人となりがわかるような思い出や、生前の功績など、印象的なエピソードを中心に考えるとよいでしょう。
淡々と事項を述べるのではなく、ご自身らしい表現を使いつつ、弔辞を聴いている方の脳裏に情景が浮かぶような内容にできるとベストです。
なお、故人に悪い印象を与えるようなエピソードは、避けなければなりません。
弔辞を聴いているご遺族の気持ちも考慮し、葬儀の場に適した内容をお選びください。
お別れの言葉
弔辞は、故人とのお別れの言葉で締めくくります。
「ご冥福をお祈りします」「安らかにお眠りください」などが、一般的な言い回しとして挙げられます。
とはいえ、結びの言葉にも定型文があるわけではありませんので、ご自身の素直な気持ちを言葉に乗せましょう。
次項にて、故人との関係性ごとに適した弔辞の例文を記載しておりますので、そちらもご参照ください。
弔辞の例文
先ほどもお伝えしましたが、弔辞には定型文があるわけではありません。
とはいえ、ゼロから文言を考えることに慣れていない方もいらっしゃるでしょう。
そこで以下に、故人との関係性別に弔辞の参考になる例をいくつか記載させていただきます。
会社関係者(上司)
△△さんのご霊前に、社員を代表し謹んで哀悼の意をささげます。
いつも広く深い心で私たちを見守ってくれた△△さんがご逝去されたこと、今でも信じられません。
私が、入社したばかりで戸惑うばかりの日々を送っていた頃「最初は誰だってわからなくて当然だ」と、何度も励ましてくれたのが△△さんでした。
不安で押しつぶされそうになっていた私が、新しい仕事にも臆せず挑戦できるようになったのは、あのときにかけていただいた言葉のおかげです。
今後も△△さんにご指導いただきたかったのですが、それはもう叶いません。
今はまだ悲しみに暮れておりますが、これからは△△さんのご意思を引き継ぎ、社員一同力を合わせて会社の発展に努めます。
△△さん、本当にお世話になりました。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
会社関係者(同僚)
△△さん、もう二度と帰らぬあなたの御霊に最後のお別れの言葉を申し上げなければならないことは、今なお信じられません。
△△さんと私は、同期入社という縁で今日まで机を並べてきました。
入社当日、緊張している私の肩をぽんっと叩いて「よろしくね」と気さくに声をかけてくれたのが、昨日のことのように思い出されます。
社内はもちろん、顧客からの信頼も厚いあなたに、私は助けられてばかりでした。
つい先日も、私が大失敗したときに夜遅くまで手伝ってくれましたね。
あなたに恩返ししなければ、と思っていた矢先、こんなにも早くお別れの日が来るとは思ってもいませんでした。
△△さん、惜別の言葉とともに、あなたの同期でいられたことに感謝致します。
どうか安らかに眠ってください、さようなら。
会社関係者(部下)
謹んで、△△さんのご霊前に申し上げます。
5年前、私の所属する部署に配属されてきたあなたは、まだあどけなさの残る青年でした。
何ごとにも臆せず積極的に行動し、納得いかなければ徹底的に突き詰めるあなたの姿が、昨日のことのように思い出されます。
明るくてエネルギッシュな、社内のムードメーカーだったあなたが、不慮の事故に巻き込まれて命を落とすことになるなんて、いまだに信じられません。
悔しくて、怒りがこみ上げてきます。
でも、一番悔しいのは△△さん自身でしょう。
また、これまで△△さんを大事に育ててこられたご両親の気持ちを思うと、慰めの言葉も見つかりません。
ご遺族には、私にできる限りの支援をしたいと思っています。
△△さんもどうか見守っていてください、ご冥福を心よりお祈りいたします。
友人
△△さんのご霊前に、謹んでお別れの言葉を申し上げます。
この度は△△さんの突然の訃報に、驚きと悲しみの気持ちでいっぱいです。
つい先日、一緒に出かけたときはあんなに元気だったのに、このようなかたちで再会することになるとは、いまだに信じられません。
△△さんと出会ったのは、大学の入学式でした。
偶然、隣同士になった私たちは意気投合し、それ以来行動をともにするようになりました。
恋愛の相談をしたり、仕事の愚痴をこぼしたりと、社会に出てからも学生時代と変わらずなんでも話せる△△さんに、私は何度救われたことか……。
お互い家庭をもってからも、定期的に連絡を取り合っていました。
△△さんは、私にとってかけがえのない存在です。
名残は尽きませんが、この辺でお別れをしなければなりません。
どうか安らかに眠ってください。
祖父母
祖父の葬儀にあたり、ここに謹んで哀悼の意をささげます。
本日、祖父△△に別れの言葉を伝えなければならないこと、いまだに実感できずにいます。
祖父は寛大で優しく、おちゃめな人でした。
私がまだ幼い頃、母と一緒に家へ遊びに行くと、朗らかな笑顔で出迎えてくれました。
そのたびに、チョコレートやケーキなど、私の大好きだったお菓子をたくさん用意してくれていたのを覚えています。
それらを食べ終わったあとは「晩ご飯の野菜も好き嫌いせずに、しっかり食べなきゃだめだよ」と、毎回のように約束させられていました。
そんな祖父の姿を、まるで昨日のことのように思い出します。
これからも、祖父との大切な思い出を胸に生きていこうと思います。
今まで本当にありがとうございました、どうぞ安らかにお休みください。
弔辞のマナーと注意点
弔辞を読むにあたって、前もって押さえておきたいマナーや注意点がいくつかあります。
葬儀中に慌てることなく、故人を心安らかに送るためにも、確認しておきましょう。
遺族から弔辞を依頼されたら快く引き受ける
文章を考えたり、人前で話したりするのが苦手で「弔辞を辞退したい」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、よほどの理由がない限り引き受けるのが礼儀です。
文章が上手でなくても、話すのが苦手でも、一生懸命に文面を考えて心を込めて伝えればよいのです。
弔辞を依頼してくださった遺族の気持ちも考慮し、快く引き受けましょう。
とはいえ、出産間際や体調不良といった正当な理由がある場合は、話が変わってきます。
無理に引き受けると、かえってご遺族に気を使わせてしまうかもしれませんので、なるべく早めに連絡し、理由を説明するとともに丁重にお断りすれば問題ありません。
ゆっくり丁寧に読み上げる
弔辞は、はっきりとした声で、ゆっくりと落ち着いて読み上げることが大切です。
小さい声や早口では、遺族や参列者の方が聞き取れず、ご自身の伝えたい想いもうまく伝わりません。
なお、感情の高ぶりによって声が震えてしまうこともあるかもしれませんが、慌てたり恥ずかしがったりせず、心を落ち着けて読み上げましょう。
忌み言葉を使わない
弔辞の文言を考えるにあたって、忌み言葉は避けなければなりません。
忌み言葉とは、日常的に使うぶんには問題ないものの、葬儀の場では“不幸が続く”“縁起が悪い”といった理由から避けるべきとされている言葉のことです。
弔辞で避けるべき忌み言葉として、以下が挙げられます。
忌み言葉の一例
繰り返し言葉 | ・たびたび
・くれぐれも ・いよいよ ・ますます ・返す返す ・重ね重ね ・重ねる ・重々 ・次々 |
縁起が悪い言葉 | ・ 切る(切れる)
・終わる ・離れる ・四(4) ・九(9) |
直接的な言葉 | ・死ぬ(死んだ)
・死去 ・急死 |
繰り返し言葉に分類されるものは、“死や不幸が再び起こることを連想させる”という意味合いから、葬儀の場にはふさわしくないとされています。
また数字の4と9は死や苦しみを想起させるため、使用を避けるべきです。
くわえて、“死ぬ”や“急死”など、“死”を直接的に表現することも避け、“逝去”や“急逝”など、葬儀の場にふさわしい言葉に言い換えましょう。
3~5分程度で読める内容にまとめる
弔辞は、一人あたり3~5分で読みあげるのが一般的です。
伝えたい気持ちは山ほどあるかもしれませんが、葬儀の進行上の都合も考慮し、持ち時間内で収まる程度の文量に抑える必要があります。
人が1分間に話せる文字数はおよそ300文字といわれているため、1,000~1,200文字程度を目安に文言を考えるとよいでしょう。
400字詰めの原稿用紙なら3枚を目安にすると、丁度よい文量に収まるはずです。
葬儀における弔辞の流れ
葬儀の場で慌てないためにも、弔辞を読み上げる際の流れも確認しておきましょう。
宗教や宗派によっては多少の違いもありますが、一般的には以下の流れで進められます。
【一般的な弔辞の流れ】
1.司会者に名前を呼ばれたら立ち上がり、祭壇の前に進む
2.祭壇の前で僧侶と遺族に対して一礼する
3.遺影に向かって一礼する
4.「弔辞」と書かれた面を参列者に向けるように、弔辞を包みから取り出す
5.包みは懐にしまう(所定の場所が設けられている場合は、そこに置く)
6.左手で弔辞を持ち、右手で開く
7.両手で弔辞を持ち、お別れの言葉を読み上げる
8.お別れの言葉を読み終えたら、弔辞を包みに戻す
9.包みの表面が霊前に向くようにささげる(置く)
10.遺影に向かって一礼する
11.僧侶と遺族に一礼し、自席に戻る
弔辞を読み上げる際は、故人や遺族への敬意を表すためにも、姿勢を正し、丁寧な所作を心がけましょう。
弔辞は、葬儀で故人に感謝や哀悼の意を伝えるための言葉
今回は、弔辞の概要とあわせて、使いやすい例文やマナーを紹介しました。
弔辞は、故人と交流の深かった方が、生前の感謝や哀悼の意を伝えるための言葉です。
定型文があるわけではありませんが、マナーや注意点を押さえたうえで、葬儀の場にふさわしい適切な内容にしましょう。
どのような内容にすべきか迷われた際は、本記事で紹介した例文をアレンジして、自分なりの文章に書き換えてみてください。
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