ご家族が「危篤」だと判断された際、悲しみや不安が頭を巡り、混乱してしまうこともあるでしょう。
錯乱して、何をすべきかわからなくなることに備えて、あらかじめ危篤者に残された時間やご家族がすべきことは頭に入れておきたいところです。
そこで本記事では、危篤から臨終までの期間と、ご家族がとるべき行動についてお伝えします。大切なご家族のために、できる限りの対応をしてあげたいとお考えの方は、ぜひご覧ください。
危篤とはどのような状態なのか
危篤とは、外傷や病気が悪化して意識を失い、医師の治療をもってしても回復が見込めない状態を指します。医学的な判断基準が設けられているわけではないので、担当の医師が患者の意識レベルや心拍数の低下などを診て判断し、最終的な決断を下すのが一般的です。
危篤の状態は患者によって異なり、危篤と判断されてから数時間で臨終を迎える場合もあれば、小康状態に転じる場合もあります。小康状態とは、危篤から徐々に回復がみられる状態を指しますが、一概に快方に向かうわけではなく、安心できる状況ではありません。患者によっては、危篤と小康状態を繰り返す場合もあるのです。
このように、ひと口に危篤といっても個人差があるため、必ずしもすぐに亡くなるとは言い切れません。
【関連記事】身近な人が危篤のときのお見舞いのマナーを解説
重篤との違い
重篤とは、外傷や病気などの要因により、このままでは生命の維持が困難になる危険性があると判断された際に使われる医療用語です。
とはいえ、危篤と同様、明確な基準があるわけではないので、重篤と判断されるか否かは、医師の裁量にゆだねられます。
危篤は、回復の見通しが立たず、いつ臨終を迎えてもおかしくない状態を指すのに対して、重篤は回復が見込めるため、危篤よりも命の危険性が低い状態です。
なお、重篤は医療従事者が使用する医療用語の一種なので、患者やご家族に対しては使用しないのが一般的です。
危篤から臨終までの期間
医師に危篤と判断されてから臨終まで、人によって間隔が異なるため、ご本人に残された時間は具体的に何日程度なのかは、明言できないのが実情です。
患者によっては、危篤後に数分で臨終を迎えることもありますし、まれではありますが、小康状態に入り身体が回復した結果、数年以上にわたって元気に過ごす方もいます。
仮に、一度は意識を取り戻して快方に向かったとしても、再度、危篤状態に陥る可能性も否定できません。
このように、危篤状態になってからは、たとえ医師でも正確な臨終までの期間を判断するのは困難なのです。
ご家族が危篤に陥った際は、心中穏やかではないと思われますが、大切な方との最後の時間を悔いなく過ごすために、できる限り長く付き添えるよう意識してみてください。
危篤状態から回復することはあるのか?
危篤と判断されても、すべての患者がすぐに臨終を迎えるわけではありません。
先述したように、数分後に亡くなる場合もあれば、一時的に回復して小康状態を繰り返し、数日~数か月の期間を経て臨終を迎える場合もあります。
つまり、奇跡的に危篤状態から回復して、これまで通りの生活に戻る場合もあり得るわけです。
危篤から回復する可能性も否定できませんが、医師が危篤と判断した時点で予断を許さない状態であることは間違いなく、その後の経過は患者次第です。
なお、快方に向かうことを過度に期待しすぎて、万が一の際により大きな悲しみに襲われることもあるので、回復する可能性については頭の片隅に置く程度にしておきましょう。
【関連記事】身近な人が危篤のときのお見舞いのマナーを解説
危篤の連絡を受けた際にとるべき行動
ここからは、危篤の連絡を受けた際、ご家族にはどのような行動が求められるのかをお伝えします。
動揺して正確な判断・行動ができない可能性もあるので、以下で紹介する内容を押さえて、いざというときに落ち着いて行動するためにお役立てください。
心の準備をしておく
危篤の連絡を受けた際、まずは落ち着き、万が一を想定したうえで心の準備をしておくことが大切です。
危篤は、医師が患者の状態を総合的に診たうえで、回復の見込みが薄く、死期が近付いていると判断された状態です。
ご家族が危篤状態だと知らされて、動揺してしまうのは至極当然の反応といえます。
しかし、あまりにも動揺が激しすぎると、判断能力が低下して、必要な準備や対応が遅れてしまう可能性があります。
無理をしてまで普段通りに立ち振る舞う必要はありませんが、できる限り心を落ち着けて、冷静に現状を把握できるとよいでしょう。
すぐに病院に行く
ご家族が危篤状態に陥った際、いつ状態が急変するのか予測できないため、少しでも長く大切なご家族に付き添うためにも、すぐに病院へ向かうことを推奨します。
危篤者は、意識がないとはいえ、周りの音を聞き取っている場合が多く、手を握り言葉をかけてあげれば、声は届くかもしれません。
感謝の気持ちを伝え、思い出話をするなど、後悔のないように接することが肝要です。
なお、医師から説明を受けることで、気持ちが整理されれば、冷静に今後の対応を考えられるかもしれません。
ご自身の気持ちを少しでも落ち着かせるという意味でも、できる限り早く病院に行くのが重要です。
泊まり込みの準備をする
危篤の知らせを受けた際、可能であれば、数日分の泊まり込みの準備をしてから病院へ向かうとよいでしょう。
危篤状態に陥ってから、どの程度命を保てるのかは判然としないため、ご家族は何日か病院に泊まり込んで、危篤者に付き添う可能性があります。
2~3日の泊まり込みを想定して用意をしておくと、わざわざ自宅と病院を往復する必要がないため、いつ容態が急変するかわからない状態でも、常にご家族に付き添えます。
着替えや洗面用具、スマートフォンの充電器などを用意するとよいでしょう。
そうすれば、大切なご家族の最後を看取れないといった事態を避けられます。
ただし、あくまでも危篤の連絡を受けた際は、すぐに病院に駆けつけることが重要なため、泊まり込みの準備に手間取るようであれば、後回しにしても問題ありません。
危篤者の親族や友人・知人に連絡を取る
ご家族の誰かが危篤と判断されたら、まずは親族に伝え、そのあとに危篤者が親しくしていた友人・知人に連絡し、容態が良くない旨を伝えます。
その際、電話やメールなどの手段を用いることになりますが、緊急事態のため、できるだけ早く、手短に現状を伝えるよう意識してみてください。
以下で、危篤の連絡をする際に伝えるべき内容を紹介します。
【危篤者の親族や友人・知人に伝える内容の例】
- ・危篤者の氏名
- ・危篤者の容態
- ・立ち合い希望の有無
- ・病院名と病室の部屋番号
- ・病院の住所
- ・連絡先
上記の内容を速やかに伝え、可能なら危篤者の病室まで来てもらうようお願いしましょう。
危篤の連絡をするのは、近しい関係者に、危篤者が存命のあいだに会ってもらうためと、もし病院に来られなくても、事前に伝えて万が一の際の心づもりをしてもらうためです。
したがって、連絡漏れがあってはならないので、あらかじめ連絡する相手をリストにまとめておくことを推奨します。
ご自身の職場に状況を伝えておく
危篤者の親族や友人・知人に知らせたあとは、忘れずにご自身の職場にも連絡を入れて、休暇の申請や仕事の引き継ぎを行います。
なぜなら、ご家族が危篤状態に陥った場合、付き添いのために数日から数週間、病院や近くのホテルに滞在することも考えられるからです。
大切なご家族との最後の時間を優先したい気持ちがあるなら、至急ご自身の職場にも状況を伝え、危篤者に付き添える時間を確保しておきましょう。
なお、ご家族が闘病中のあいだから、あらかじめ会社や上司に報告・相談しておけば、仕事の引き継ぎがスムーズに進みます。
まとまった現金を用意しておく
危篤者への対応では、さまざまな費用が必要になるため、ある程度まとまった現金を用意しておいてください。
危篤者に付き添うための交通費や食事代にくわえて、臨終を迎えることも視野に入れると、治療費や遺体運搬費、葬儀の費用もかかります。
また、駆けつけてくれた方への飲食代や宿泊費なども、危篤者のご家族が負担する場合があります。
いつ容態が急変してもおかしくない状況では、このような費用を調達するために、わざわざ銀行やATMに行く時間も惜しいはずです。
可能であれば、危篤と判断される前に、あらかじめ現金を手元に用意しておいて、危篤者が臨終を迎える際に間に合わなかったという事態を回避しましょう。
なお、危篤者が臨終を迎えると、間もなく銀行口座が凍結され、相続関係が整理されるまで、預金を引き出せなくなってしまいます。
危篤者の対応にかかる費用を、危篤者の貯金から調達しようと考えている場合、口座が凍結される前に、忘れずに引き出しておく必要があります。
【関連記事】親の葬儀代はどれくらい? 費用や避けたいトラブルを解説
葬儀社を決めておく
ご家族が危篤と判断された場合、万が一のことを考慮して、葬儀社を決めておく必要もあります。
危篤者が臨終を迎えた際には、死別による悲しみを抱えながら、葬儀の手続きを進めなければならず、精神的な負担がさらに大きくなりかねません。
そのため、あらかじめ葬儀社を決めておき、葬儀の形式や予算について相談しておけば、いざ臨終を迎えたあとも慌てずに、穏やかに送り出すことができます。
また、病院で臨終を迎えた場合、一般的には1~3日でご遺体を搬出しなければならず、葬儀社が決まっていないと、非常に短い期間でご遺体の安置所を探さなければなりません。
ただでさえ気持ちが落ち込んでいる状態なので、葬儀までの時間を少しでも落ち着いて過ごすためにも、あらかじめ葬儀社に連絡しておくことをおすすめします。
なお、葬儀社に連絡する際、葬儀の準備は誰もが経験するものではないため、何が必要なのかがわからないという場合も往々にしてあります。
たとえ知識がなくても恥じる必要はなく、遠慮せずに葬儀社に相談して、アドバイスを受けることが大切です。
【関連記事】葬儀社選びのポイントは?よくあるトラブル例も紹介
危篤状態を知らせる人の範囲
危篤を知らせる際は、危篤者からみて3親等までの親族や、危篤者と仲が深かった親族、友人・知人に連絡するのが一般的です。
以下で、親族の3親等とは具体的にどこまでを指すのか紹介します。
【危篤状態を知らせる親族の範囲】
1親等 | 父母、子 |
2親等 | 祖父母、兄弟、姉妹、孫 |
3親等 | 曽祖父母、叔父、叔母、甥、姪、ひ孫 |
親族に危篤の連絡をする場合の範囲は、上記でお伝えした3親等にくわえ、配偶者も該当します。
病院や医師から危篤を知らされた際は、まず同居しているご家族に伝えたうえで、そのほかの親族へは家族間で割り振りをして、効率を重視して連絡するようにしましょう。
危篤者と親交が深かった親族がいる場合は、優先して伝えることもご検討ください。
また、血縁に関係なく、危篤者の友人・知人にも連絡を入れる必要があります。
その際、見境なく危篤者と関わりのあった友人・知人に知らせるのではなく、危篤者を看取ってほしい、または、危篤者本人が希望している方を呼びます。
ただし、あまりに多くの方に声をかけると、ご家族はその対応に追われることにもなりかねないので、誰に連絡するのかは、ご家族で相談して決めるのが重要です。
連絡方法
危篤状態であることを伝える方法としては、電話を使用するのが効果的です。
メールやSNSでは、いつ読まれるのかわからず、危篤のような緊急事態の連絡方法としては不向きと言わざるを得ません。
ただし、電話がつながらない場合は併用する必要があり、危篤者の氏名や状況、病院の名前や住所を、簡潔にまとめて送信しておくのが有効です。
しかし、メールやSNSでの連絡は、実際に伝わったかどうかが判断できません。
送信後はそのままにせず、後から改めて電話で連絡をとって、確実に現状を伝える必要があります。
連絡するタイミング
危篤の連絡は緊急を要するため、タイミングにこだわる必要はありません。
ご家族が危篤を知らされたのが深夜や早朝であっても、一刻を争う状況なので、早急に親族や友人に知らせてください。
その際「このような時間に申し訳ありません」と、相手に配慮する一言を忘れずに添えましょう。
連絡するタイミングが遅くなると、危篤者の最後の瞬間に間に合わなくなるおそれがあり、未練が残ってしまうかもしれません。
そのような事態を避けるためにも、相手に配慮する気持ちをもちつつ、どのような時間帯であっても、できる限り早く伝えることが大切です。
危篤を伝える際の注意点
遠方に住んでいる親族や、高齢で病気を患っている方、妊娠されている方などに危篤を知らせる際は、注意すべき点があります。
遠方に住む親族に伝える場合、危篤の連絡は病院に来るよう催促するものではないことを念頭に置いて、あくまでも報告のためという伝え方をしましょう。
遠方からすぐに駆け付けるのは難しいので、連絡する相手の気持ちを察して、思いやりのあるやり取りを心がけることが大切です。
病気を患っている高齢者や、妊娠されている方は、精神的なショックで体調に悪影響をおよぼす可能性があるので、伝えるべきかを慎重に勘案する必要があります。
危篤者との関係性によりますが、率直に伝えるのではなく、相手に配慮して言葉を選ぶよう留意してください。
また、近年では、日常的なやり取りのほとんどがSNSを通じて行われるようになりました。
危篤のような緊急時の連絡手段として活用する場合は、ややくだけた印象を与えかねないので、厳かな内容であることが伝わるよう、文面には注意してください。
大切な方が危篤状態になった際にできること
ここからは、大切なご家族が危篤になった際、どのように寄り添うことができるのかをお伝えします。
以下で紹介する内容のほかにも、ご自身が危篤者に対して何ができるのかを考える際の参考になれば幸いです。
付き添い時
危篤状態になり意識がなくても、語りかけられた言葉は認識している場合があるので、積極的に話しかけてあげましょう。
そうすれば、危篤者はそこにご家族がいるのがわかるので、安心感を得ることができ、最後まで希望をもちつづけられます。
例として、危篤者には「会いに来たよ」「○○さんも来てくれたよ」など、危篤者に寄り添った安心できる言葉をかけるのが望ましいです。
もしくは、これまでの思い出や、感謝の気持ちを伝えて、心残りのないように接します。
言葉が詰まってうまく話せない場合は、手を握ってあげるだけでも、そばにいると伝わります。
待機時
危篤者のそばに、ご家族の全員が行けるとは限りません。
待機しているご家族は、危篤者が臨終を迎えたあと自宅に戻るのであれば、布団一式の用意、くわえて弔問客への対応の準備が必要です。
つらい心境のなかで向き合うことになるので、ほかのご家族とコミュニケーションをとりながら、互いに支えあって準備にあたりましょう。
まだ危篤者が存命のうちから、このような作業を進めることに抵抗があるかもしれませんが、ご家族それぞれに役割があることを理解するのが大切です。
家族や親戚が危篤状態の場合、忌引き休暇は認められるのか
大切なご家族が危篤状態になった際、仕事を休んででもすぐに駆け付けたいところですが、危篤による忌引き休暇は、一般的に認められていません。
忌引き休暇とは、親族の誰かに不幸があった際、葬儀に参列するという理由で取得する休暇のことをいいます。
そのため、危篤の場合は有給休暇、または欠勤扱いになります。
危篤状態はいつまで続くのか予測できないうえ、病院への交通費や滞在費、治療費など、多くの費用がかかるため、休暇中も賃金が発生する有給休暇を取得することが賢明です。
危篤から臨終までの期間は患者によって異なるため明言できない
今回は、危篤から臨終までの期間と、ご家族がとるべき行動についてお伝えしました。
危篤と判断されてから臨終までの期間は、患者によって異なるため、具体的にいつまで続くのかは明言できません。
ご家族においては、危篤とはどのような状態なのかを理解したうえで、簡単ではありませんが、できる限り平常心を保って現状に目を向けることが大切です。
危篤の連絡を受けた際に必要な行動を把握して、後悔のない時間を過ごしてください。
大阪の葬儀・家族葬ならかわかみ葬祭にお任せください。140年にわたってご家族に寄り添った葬儀を執り行っており、豊富な経験と知識を有しています。
大切なご家族の最後を、信頼できる葬儀社に任せたいとお考えの方は、ぜひお問い合わせください。