
香典を受け取ったあとの対応や税金の申告は、葬儀後に悩みやすいテーマの1つです。
近年では家族葬や香典辞退が主流になりつつあり、従来のマナーや考え方が通用しない場面も増えています。
本記事では、香典は誰のものなのか、喪主以外に渡すケースや発生する税金をふまえて分かりやすく解説します。
受け渡し時の注意点やマナーもまとめていますので、安心して葬儀に向き合うための参考にしてください。
香典は誰のものになる?
香典は、参列者が故人への弔意を示すとともに、ご家族の経済的負担を和らげる目的で渡す金銭です。受取人を直接定めた法律がないため、親族間で認識のずれが生じることもあります。
ここでは、香典の受取人に関する裁判例や、葬儀費用の負担状況に応じた扱いを解説します。
香典は誰のものになる?
- 香典の受取人を定めた法律と裁判例
- 香典は原則として喪主のもの
- 葬儀費用の負担者と喪主が異なる場合は注意
- 複数人で葬儀費用を負担したケース
- 兄弟や家族で分ける必要はない
それぞれ見ていきましょう。
香典の受取人を定めた法律と裁判例
香典の受取人を直接定めた法律はありません。一方、香典の帰属について判断を示した裁判例はあります。
東京地方裁判所の昭和61年1月28日判決では、香典は葬儀費用に充てる目的で、葬儀を主宰する喪主へ贈与されるものとしています。また、広島高等裁判所の平成3年9月30日決定は、香典の基本的な性格を葬儀費用の一部負担と捉え、喪主がまず葬儀費用に充て、次いで法事をはじめとする祭祀費用に使用できるとの見解を示しました。
ただし、これらの裁判例はいずれも個別の事案に対するものであり、すべてのケースに当てはまるとは限りません。実際の受取人を考える際は、香典を渡す目的にくわえ、喪主と葬儀費用の負担者との関係も確認する必要があります。
香典は原則として喪主のもの
香典は、葬儀を主宰し、全体を取り仕切る喪主への贈与と考えるのが通例です。
多くのケースでは、喪主が葬儀費用も負担しているため、香典はその補填として受け取るものとされています。
受け取った香典は喪主が管理し、葬儀費用や供養に充てる流れが一般的です。
参列者も「喪主に渡している」という認識で香典を包んでいることを押さえておきましょう。
葬儀費用の負担者と喪主が異なる場合は注意
注意が必要なのは、喪主と葬儀費用の負担者(施主)が一致しないケースです。
たとえば、形式上は長男が喪主を務めているものの、実際の費用は別の兄弟や親族が負担している場合もあります。
喪主と施主が異なる場合でも、参列者の混乱を防ぐ意味では、いったん喪主が受け取るのが自然です。
ただし、施主との間で何も取り決めがないと、葬儀費用への充当や清算に関して揉め事が生じかねません。
トラブル防止のためにも、事前に親族間で以下のような合意を形成しておくことをおすすめします。
- 香典はすべて葬儀費用に充当し、過不足は喪主が対応する
- 相続人全員で葬儀費用を分担し、負担割合に応じて香典も按分するなど
親族の合意が得られていれば、どのような分配方法でも問題はありません。
大切なのは、扱いを曖昧にしないことです。
複数人で葬儀費用を負担したケース
複数人が葬儀費用を分担したときは、話し合いのうえ、実際の負担額をもとに香典を精算する方法があります。たとえば、2人が葬儀費用や香典返しを半分ずつ負担したのであれば、香典からそれぞれの負担分を精算し、残金も半分ずつ分けるのが一つの考え方です。負担額が異なるときは、その割合に合わせて精算・分配することもできます。
精算時の認識のずれを防ぐには、各自が支払った金額や香典の総額を記録し、領収書も保管しておくことが重要です。あわせて、香典の充当方法や残金の分け方を親族間で話し合い、その内容を書面に残しておけば、あとから確認しやすくなります。
兄弟や家族で分ける必要はない
香典は相続財産ではないため、法定相続人で分配する義務はありません。
葬儀費用や供養に充てたうえで香典が余った場合、残りは喪主が管理するケースが比較的多く見られます。
すべての香典が葬儀費用として使われた際は、トラブルが起こりにくいでしょう。
しかし、お金が余った場合には、残金を誰が受け取るべきか揉めるケースもあります。
兄弟や家族への分配は、あくまで喪主の判断によって決定されることです。
不要なトラブルを避けるためにも、親族間で「香典は喪主のもの」と共通認識を形成しておくことが大切です。
受け取った香典はどのように扱う?
香典を受け取ったあと、「相続財産に含まれるのか」「税金はかかるのか」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。ここでは、香典や弔慰金と相続・税金との関係にくわえ、状況に応じた扱いを解説します。
受け取った香典はどのように扱う?
- 香典は相続財産にならない
- 故人が葬儀費用を用意していたケース
- 高額な香典は課税対象となる場合もある
- 社葬で受け取った香典はご家族の収入として扱える
- 会社からの弔慰金には相続税が課されるケースも
詳細を見ていきましょう。
香典は相続財産にならない
香典は、参列者が喪主やご家族に対して弔意を表す意味合いで贈与するお金です。
そのため被相続人(故人)の遺産に含まれず、遺産分割の対象にはなりません。
また、香典は故人の死亡後に発生するお金であることから、故人が生前に所有していた財産と区別して考えられます。
したがって、相続放棄をした方も、喪主として香典を受け取ることは可能です。
相続手続きと香典の管理を切り分けて考えることが、家族間のトラブルを防ぐポイントといえます。
故人が葬儀費用を用意していたケース
故人が生前に葬儀費用を用意しており、互助会の積立金や葬儀保険の保険金などで費用の大半を賄える場合は、参列者から受け取った香典が余る可能性があります。
この場合も、香典は一般的に喪主への贈与と考えられます。葬儀費用や香典返しに充てたあとの残金は、喪主が今後の法要や供養に使用するほか、親族間の合意に沿って分けることも可能です。葬儀費用に充てる資金と香典の収支を分けて記録しておけば、出所と使い道を確認しやすくなります。
高額な香典は課税対象となる場合もある
原則として、香典には贈与税・相続税が課されないため、一般的な金額であれば確定申告の必要はありません。
ただし、社会通念上相当といえないほど高額な香典は、例外的に贈与税や所得税の課税対象と判断される可能性があります。
たとえば、個人から極端に高額な香典を受け取った場合や、大規模な葬儀を執り行った場合には注意が必要です。
金額に明確な基準はありませんが、香典の本来の趣旨(葬儀費用の補助)から大きく逸脱していないかが判断の目安になります。
不安がある場合は、信頼できる葬儀社や専門家に相談してみましょう。
関連記事:香典金額が多いのは失礼?年代・関係性別の相場や香典返しのマナー
社葬で受け取った香典はご家族の収入として扱える
社葬では会社が受付や集計を担当することもありますが、会葬者が持参した香典が直ちに法人の収入となるわけではありません。国税庁によると、香典は法人の収入に含めず、ご家族の収入とすることが可能です。
受取人や香典返しの負担者が曖昧だと、会社とご家族のあいだで認識が食い違うおそれがあります。「香典を誰が受け取るか」「香典返しの費用を誰が負担するか」を事前に決め、香典の収支は会社の会計と分けて管理しておくと安心です。香典帳と受領額を照合したうえで、ご家族へ引き渡した金額や日付も記録すれば、受け渡しの経緯を確認しやすくなります。
会社からの弔慰金には相続税が課されるケースも
社員が亡くなった際、会社からご家族に支給される弔慰金は、香典と性質が異なります。
弔慰金は、企業の福利厚生制度の一環として支払われるもので、一定額までは相続税がかかりません。
ただし以下のようなケースでは、みなし相続財産として相続税の課税対象になることがあります。
- 弔慰金の金額が、相続税法の定める相当額を超える場合
- 実質的に退職金や功労金とみなされる場合
社内規程に基づいて、高額な弔慰金が支給されることも珍しくありません。
名目だけでなく、金額や性質を確認することが大切です。
香典を受け取る際の注意点
香典は受け取り方や扱い方を誤ると、親族や参列者との間で思わぬトラブルにつながることがあります。ここでは、使い道や分配方法、集計・保管、香典返し、地域のマナーについて見ていきましょう。
香典を受け取る際の注意点
- あらかじめ香典の使い道や分配方法を決めておく
- 香典を適切に集計・保管する
- 香典返しは葬儀費用に含まれない
- 地域独自のマナーを把握しておく
それぞれ解説します。
あらかじめ香典の使い道や分配方法を決めておく
多くの場合、香典だけですべての葬儀費用をまかないきれません。
ただし、参列者が多かった場合などには、香典の総額が葬儀費用を上回る可能性もあります。
余った香典は、以下のように扱われるケースが通例です。
- 今後の法要に充てる
- 喪主が全額を管理・受領する
- 喪主の判断で、相続人全員に分配する
香典は相続財産ではないため、余ったお金の分配を喪主以外の相続人が求める権利はありません。
香典の総額が多くなりそうな場合は、扱いについて親族間で合意を形成しておくことが大切です。
香典を適切に集計・保管する
香典の受け取りは受付係、記録や集計は会計係が担当するのが一般的です。小規模な葬儀では、受付係が会計を兼ねるケースも見られます。受付係は、香典袋と芳名帳の該当箇所に同じ番号を振ってから会計係へ引き渡し、会計係が贈り主の氏名・住所・金額を香典帳に記録します。香典袋や芳名帳と照合すると、記載漏れや集計ミスを見つけやすくなります。現金は、可能であれば2人以上で確認するとよいでしょう。
現金の管理担当者が席を離れるときは、別の担当者に預けるか、鍵のかかる場所に保管することが重要です。葬儀後は、香典・香典帳・香典袋をまとめて、喪主または事前に決めた管理者へ引き渡します。香典袋は、金額や贈り主をあとから確認できるよう、香典返しが終わるまで保管しておくのが基本です。
香典返しは葬儀費用に含まれない
香典返しは、香典をいただいた方へ感謝の気持ちを表すものであり、費用は喪主個人の負担とされます。
相続税を計算する際、葬儀費用は相続財産から控除できますが、香典返しの費用は控除の対象外となるため注意しましょう。
相続税の申告において、葬儀費用に含められる支出の例は以下のとおりです。
| 葬儀費用になるもの | 葬儀費用にならないもの |
|---|---|
|
|
葬儀前後はさまざまな手続きに追われ、余裕のない方が大半です。
支出の区分を意識的に整理するよう心がけましょう。
参考:相続財産から控除できる葬式費用|国税庁
関連記事:火葬代は戻ってくる?葬祭費の補助金制度や申請時の注意点を解説
地域独自のマナーを把握しておく
近年は家族葬が主流となっている影響で「香典辞退」を選択するご家族が少なくありません。
たとえば大阪では、葬儀社との打ち合わせにおいて8~9割のご家族が「香典辞退」を宣言されています。
香典辞退の背景にあるおもな理由は、香典返しの手間や精神的負担の削減です。
いただいた弔意にお返しする気遣いは、故人を見送ったあとの「仕事」としてご家族を疲弊させる一因になっています。
一方、故人と親しい間柄の方にとっては「せめて香典だけでも」という気持ちもあるでしょう。
相手のお気持ちを汲み入れることは大切ですが、一部の方からのみ香典を受け取ってしまうとトラブルに発展する可能性があります。
「なぜ自分だけ断られたのか」と誤解を招くおそれがあるため、一貫性を持った対応が必要です。
地域の風潮やマナーをふまえ、ご家族として対応の方針を定めることが、関係者間の摩擦を防ぐポイントです。
判断に迷う場合は、信頼できる葬儀社に相談してみることをおすすめします。
香典を渡す相手・タイミング・方法
香典を渡す相手・タイミング・方法には、それぞれ基本的なマナーがあります。「いつ・誰に・どのように渡すべきか」で迷った場合は、以下の内容を参考にしてください。
香典を渡す相手・タイミング・方法
- 香典は袱紗から取り出して両手で渡す
- 通夜か告別式の参列時に渡す
- 受付や喪主以外のご家族に渡してもよい
それぞれ見ていきましょう。
香典は袱紗から取り出して両手で渡す
香典を差し出すときは、袱紗から香典袋を取り出し、相手が表書きを読める向きに整えて両手で差し出します。その際は、「心よりお悔やみ申し上げます」と一言添え、静かに一礼するのが基本です。
香典袋を袱紗に包まず持ち歩いたり、片手で差し出したりすると、相手に配慮を欠いた印象を与えかねません。受付で慌てないよう、表書きや中袋の記入、包んだ金額を出発前に確認しておくとスムーズです。
通夜か告別式の参列時に渡す
香典を渡すタイミングは、通夜または告別式に参列した際が基本です。
「不幸が重なる」とされることから、2回に分けて渡すのはマナー違反とされています。
通夜と告別式の両方に参列する場合は、通夜で渡し、告別式では記帳のみ行うケースがよく見られます。
香典袋は袱紗に包んで持参し、受付で渡すのが通例です。
受付や喪主以外の遺族に渡してもよい
葬儀会場に受付が設けられている場合は、記帳後に受付で香典を渡します。
受付がない場合は、喪主やご家族、世話役の方に直接手渡しましょう。
実際の葬儀では、ご家族が役割分担して対応しているため、喪主以外の方に渡してもマナー違反にはなりません。
受け取った香典は、のちほど喪主のもとに集められます。
なお、受付やご家族に渡すタイミングを逃した場合は、焼香の際に御霊前へ供えるのも1つの方法です。
御霊前へ供える際は、表書きが自分側から読める向きに置くのが配慮とされています。
関連記事:葬儀の受付係のマナーや当日の流れを解説
香典の受け渡しに関してよくある質問
香典の扱い方は、立場や状況によって最適解が変わります。
ここでは、判断に迷いがちな以下3つのポイントを解説します。
- 親の葬儀の香典はどうする?
- 会社からの香典は喪主に渡す?
- 葬儀に参列できない場合、香典はどのように渡す?
回答を見ていきましょう。
親の葬儀の香典はどうする?
親の葬儀における香典は、自分が葬儀費用を負担する立場かどうかで判断します。
喪主や施主として葬儀費用を負担する場合、香典を包む必要はありません。
自分が主宰側であり、香典を受け取る立場になるためです。
すでに独立して世帯を持っており、施主が自分でない場合は、親への香典を包むのが通例です。
兄弟姉妹がいる場合は、事前に話し合い、金額や対応を揃えましょう。
配偶者の親への香典金額も、原則として自分の親と同額を包みます。
あくまで目安になりますが、香典金額に迷った際は以下の相場を参考にしてください。
| 香典を包む相手 | 金額相場 |
|---|---|
| 両親 | 5〜10万円 |
| 兄弟姉妹 | 3〜5万円 |
| 祖父母 | 1〜3万円 |
なお、学生など扶養されている立場であれば、無理に包む必要はありません。
会社からの香典は喪主に渡す?
会社から渡されるお金には「香典」と「弔慰金」があり、それぞれ扱いが異なります。
封筒に「御香典」「御仏前」などと記載されている場合は、一般の香典と同様、葬儀の際に喪主へ渡すのが基本です。
一方で弔慰金は、故人を失った社員本人への見舞金であるため、必ずしも喪主に渡す必要はありません。
福利厚生として家族弔慰金制度が設けられている場合でも、支給対象や金額は会社ごとに異なります。
判断に迷った際は、封筒の表書きや就業規則などを確認しましょう。
葬儀に参列できない場合、香典はどのように渡す?
通夜や告別式に参列できない場合でも、香典を渡すこと自体は失礼にあたりません。
後日弔問した際に直接渡すか、現金書留で郵送する方法が一般的です。
銀行振込はマナー違反となるため注意しましょう。
通夜・葬儀当日に郵送が間に合う場合は、斎場に送ることも1つの選択肢です。
ただし、現金書留を受け取ってもらえるかどうか、事前に斎場へ確認する必要があります。
当日に間に合わない場合は、喪主の自宅宛に郵送しましょう。
ご家族の香典返しの負担にならないよう、遅くとも1ヶ月以内に届くよう手配することが大切です。
大阪では、香典を辞退するご家庭も多いため、郵送前に意向を確認しておくことをおすすめします。
まとめ:香典は喪主への贈与と考えるのが一般的
香典は、故人への弔意を示し、葬儀費用の負担を軽くする目的で渡される金銭で、裁判例では喪主への贈与と判断されています。ただし、受取人を直接定めた法律はありません。
香典は相続財産に含まれず、社会通念上相当な金額であれば、原則として贈与税の対象外です。
費用負担者と喪主が異なる場合や、社葬で香典を受け取る場合は、香典の受取人や管理・分配方法を事前に決めておきましょう。
葬儀のマナーや香典の扱いに不安がある方は、かわかみ葬祭へご相談ください。お問い合わせは24時間365日受け付けており、電話での相談に抵抗がある場合は無料資料請求もご利用いただけます。


































